生産性向上につながるオフィス環境改善、10個の工夫
コロナ禍をきっかけにリモートワークなどの新たな働き方が広がりましたが、昨今ではオフィス回帰の動きが強まり、改めてオフィスの在り方が見直され始めています。そんな中で近年注目されているのが生産性を高めるオフィス環境です。従業員の生産性を高めていくためには、オフィス環境の最適化は欠かせません。
今回の記事では、生産性向上に効果的なオフィス環境の工夫について事例を交えながらご紹介いたします。
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目次
1. 生産性を上げるオフィス環境とは
ビジネスの場でよく耳にする「生産性」。そのなかでも「労働生産性」という言葉があるのはご存じでしょうか。「労働生産性」は「生産性」としばしば混同されることがありますが、両者は異なる概念です。こちらの章では「生産性」と「労働生産性」についてと、オフィス環境と生産性の関係性について解説いたします。
1-1. 生産性とは、モノをつくるうえで生産諸要素がどれだけ効果的に使われたかということ
生産性に関する調査研究をおこなう機関である日本生産性本部では、生産性とは「あるモノをつくるにあたり、生産諸要素がどれだけ効果的に使われたかということであって、それを割合で示したもの」と定義されています。有形・無形に関わらず何かを生み出す際には、設備や建物、原材料、人の労働力などが必要です。これらのものは生産要素と呼ばれています。
つまり生産性は、商品やサービスなどを生産する時にこれらの生産要素をどれだけ効率的に使われたかを示す指標のことをさします。
1-2. 労働生産性とは、従業員1人当たりでどれだけ成果を生み出したかを示すもの
一方労働生産性とは、生産性のうち労働力に焦点を当てた指標をさします。
公益財団法人日本生産性本部によると、「労働生産性」は労働者1人当たり、あるいは労働1時間当たりでどれだけ成果を生み出したかを示すものです。「労働生産性が向上する」ということは、同じ労働量でより多くの生産物をつくりだしたか、より少ない労働量でこれまでと同じ量の生産物をつくりだしたことを意味します。
1-3. オフィス環境と生産性の関係性
一般社団法人 日本オフィス家具協会が、首都圏のワーカー3,316名に対しておこなった調査では71.4%の人が「オフィス環境は仕事のモチベーションに影響する」と回答しています。同時に「仕事の成果をあげることに影響する」と回答した人は64.8%という結果でした。
ワーカーの多くがオフィス環境は仕事のモチベーションや成果を上げることに影響すると考えていることから、オフィス環境の整備は業務の生産性向上には不可欠であると捉えられます。快適で機能的なオフィス環境は、従業員のモチベーションやパフォーマンスに直結し、結果として生産性を向上させることが期待されます。
参考:一般社団法人 日本オフィス家具協会 顧客政策委員会(「オフィスワーカーから見た、オフィス環境ニーズのトレンド」を探るための調査の実施と、分析結果を踏まえた提言・提案)
2. 生産性を上げるオフィスの環境改善の工夫10選
良好な社内コミュニケーションは従業員のモチベーションを高め、組織全体のパフォーマンスにプラスの影響を与えます。社内コミュニケーションなどの活性化も含めて、生産性向上に効果的なオフィス環境改善の具体的な工夫を10個ご紹介いたします。
2-1. 機能型デスク・チェアを採用する
長時間のデスクワークは、腰や肩など身体への負担から疲労が溜まりパフォーマンスの低下につながりかねません。人体工学に基づいた機能型デスク・チェアを採用すれば、身体の負担を軽減し生産性向上が期待できます。また起立状態で業務が行えるスタンディングデスクも併用することで、より快適な環境の構築が可能です。
スタンディングデスクの魅力は、下記記事にて解説しているのでご参考ください。
GOOD PLACE JOURNAL(スタンディングワーク導入で、自宅でもオフィスでも快適に働く)
2-2. オフィスに観葉植物を配置する
オフィス内に観葉植物を置くことで、室内の空気を浄化し、酸素を増やすことで集中力や注意力を高める効果が期待できます。ほかにも、自然を彷彿とさせる緑は、リラックス効果をもたらし、ストレスや疲労の軽減に役立つだけでなく、オフィスの雰囲気を明るくし、従業員のモチベーションアップや生産性向上にも効果的です。
こうした緑や自然に対する心理的影響を活用した空間は「バイオフィリックデザイン」と呼ばれ、オフィスでも広く取り入れられています。イギリスのエクセター大学の研究によると、オフィスに観葉植物を置くことで、従業員たちが活動的に働くようになり、生産性が15%上昇することが実証されています。
バイオフィリックデザインについては下記の記事で詳しく解説しているので、興味がある方はぜひご参考ください。
GOOD PLACE JOURNAL(バイオフィリックデザインがオフィスに与える魅力とは?その効果と実例をご紹介。)
2-3. 快適な温度と湿度に設定する
業務をおこなうオフィスの室温や湿度を空調で保つことも、従業員の生産性を左右する要素のひとつです。オフィス内の温度や湿度が高すぎる、あるいは低すぎるとパフォーマンスの低下を招きかねません。一般的にオフィスで快適だといわれるのは室温度25度程度、湿度45~60%です。
また令和3年12月に「職場における労働衛生基準」が改正され、労働者が常時就業するオフィスの室温の努力目標が、18度以上~25度以下に定められました。快適な室温・湿度は男女差や個人差が大きいため、オフィスで働く従業員の意見を参考に調整するといいでしょう。
参考:厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署(ご存知ですか?職場における労働衛生基準が変わりました)
2-4. 音楽を流す
オフィスでの業務はデスクワークが中心ですが、あまりに静まりかえった環境は無意識に圧迫感を与え、質問や会話がしづらい雰囲気を作り出してしまいます。オフィス内で目的別の音楽を流すことで、集中力の向上やストレス・緊張の緩和、コミュニケーションの活性化などが期待できるでしょう。
また、音楽だけでなく、自然の音をオフィス内に流すのも手です。当社が展開している「R-LIVE」は、ハイレゾリューション技術により独自に録音した森の原音を高品質に再現し、空間にやすらぎをもたらす空間音響商品です。音の力で森の“空気感”までをも再現し、オフィスにいながらにして自然を感じられる居心地の良い空間を実現できます。
R-LIVE詳細:GOOD PLACE その他の事業
2-5. オープンオフィスにする
オープンオフィスとは、オフィス内をパーティションや壁などで区切るのではなく、オフィス全体が見渡せるような、ひとつの広いオープンな空間で働くレイアウトのオフィスを指します。
オープンオフィスにすることで、オフィス全体の開放感も広がり、従業員同士の会話が自然と生まれ、社内コミュニケーションの機会も増えます。社内交流を活性化することで、連携やこまめな報連相が可能となり、業務効率の向上が期待できるのです。
2-6. オフィス内にリフレッシュエリアを設ける
人間の深い集中力が保てる時間は15分程度といわれています。長時間業務を行えば、より多くの成果が見込めるというわけではありません。
そのためマッサージルームやカフェエリアなど、定期的に気分転換ができるリフレッシュエリアをオフィス内に設けることも生産性を上げるオフィス環境改善におすすめです。リフレッシュエリアを設けることで集中力が回復し、生産性の向上が期待できます。
2-6-1. オフィス内にリフレッシュエリアのある企業事例
実際にリフレッシュエリアを採用している企業の中で、GOOD PLACEが携わったオフィスの施工事例をご紹介いたします。
2-6-1-1. 株式会社アーバンスペース
コロナ禍をきっかけに出社人数が減少したことでオフィスに余剰スペースが生じた為、2フロアのオフィスを1フロアに集約したアーバンスペース様。集約したスペースに広がりを持たせながら効率良く働くことができて、出社したくなるオフィスづくりを目指しました。
オフィス内の一画に社員間のコミュニケーションが自然と発生するような、ゆったりとくつろげるソファスペースを設けました。ポップカラーのリビング調の家具を設置することで遊び心残る、アットホームなリフレッシュスペースとなっています。
2-6-1-2. 株式会社JSOL
株式会社JSOL様のオフィスは、皇居に隣接しており美しい借景が臨めるビルであることから、窓から見える緑の美しさを最大限に取り込むような心地よい空間を構成しました。
12階にあるカフェスペースは、窓際のフローリングと天井の塗装でABWエリアとの統一感を持ちつつ、モルタル調の床で開放感を演出。ランチやちょっとした打ち合わせをしたり、リフレッシュをしにやってきた従業員が集まったりと、一人ひとりがリラックスしながら思い思いの時間を過ごせる空間に仕上がっています。
2-7. オフィス内にコミュニケーションエリアを設ける
生産性はもちろん業務品質の向上には、コミュニケーションは必要不可欠です。オフィス内にデスク以外のコミュニケーションエリアを設けることで、他部門や普段接する機会がないメンバー同士の会話が発生し、社内コミュニケーションを活性化させることができます。
予約不要なオープンスペースやミーティングスペースなどただ空間を用意するだけでなく、誰もが気軽に利用ができ、会話が生まれるような雰囲気づくりも重要な要素のひとつです。
2-7-1. オフィス内にコミュニケーションエリアのある企業事例
実際にコミュニケーションエリアを導入している企業の中で、GOOD PLACEが携わったオフィスの施工事例をご紹介いたします。
2-7-1-1. 株式会社コスモスイニシア 西日本支社
株式会社コスモスイニシア様西日本支社の執務エリアの入り口にはカフェスペースがあります。こちらのスペースは社員間のコミュニケーションが活発におこなわれる場を想定した、自然と人が集まるマグネットスペースとして、ゆったり作業ができるベンチや軽い打ち合わせに活用できるハイスツールを設置。
カーペットを貼り分けることで空間を分ける効果を持たせつつ、メリハリのある空間に仕上げています。
2-7-1-2. GOOD PLACE本社オフィス
GOOD PLACE本社オフィスの1階には、カフェラウンジとビッグテーブルが配置されています。
ビッグテーブルは「止まり木」のように、誰かがいると通り過ぎる人がその人に話しかけたり、コーヒーを淹れたり、ゴミ捨て場を近くに設けたりと、そこに行く目的をいくつか用意することで人が滞留し、会話が生まれるよう設計しました。
2-8. フリーアドレスを導入する
フリーアドレスはオフィス内に固定席を設けず、各々が気分や業務によってオフィスの好きな場所で働ける形式です。企業によってはオフィス内にソファやクッションを設置している事例もあり、自宅やカフェのような雰囲気の中で働くこともできます。毎日同じ席で仕事をする固定席と比べ、気分のマンネリ化を防ぎ、従業員のモチベーションアップにも効果的です。
フリーアドレスを導入している企業は、フリーアドレスに対応できるようオフィスを改修しているケースが多いです。
2-8-1. オフィス改修に伴い、フリーアドレスを導入した企業事例
実際にフリーアドレスを導入している企業の中で、GOODPLACEが携わったオフィスの施工事例をご紹介いたします。
2-8-1-1. 株式会社ウエディングパーク
オフィス改修に伴い、全面フリーアドレスにされた株式会社ウエディングパーク様。
フリーアドレスにすることで、一人ひとりに合った働き方が実現でき、つながりの広がるオフィスを目指しました。執務エリアは、さまざまな高さや形状の什器を配置し、その日の業務や気分に合わせて働く場所を自由に選ぶことができるよう設計しました。木目と白をベースとした明るい空間になっています。
2-8-1-2. 株式会社スペースシャワーネットワーク
リノベーションを機にフロア内全面をフリーアドレス化された株式会社スペースシャワーネットワーク様。スペースシャワーネットワーク様のユニークなビジネスモデルを空間でも表現するように、上質さとストリート感を醸し出すマテリアルや照明を活用したオフィスを設計しました。
フリーアドレス導入に伴い、メインのワークスペース以外にも窓際の集中スペース、カフェスタイルの座席、ハイカウンターのタッチポイントなど様々なバリエーションのワークスペースを構築しています。
2-9. クラウドPBXの導入で固定電話廃止
従来のオフィスは固定席×固定回線というレイアウトが一般的でした。しかし近年はIT技術の発展によりクラウドPBXを活用し、スマホの内線化が浸透。社内外からかけられた電話連絡を各自のスマホで着信・取次・転送できるようなツールも出てきました。
電話のために自席にいる必要はなく、各自が好きな場所で業務を遂行できるようになります。後述のABWやフリーアドレス、テレワークなどでも活用されているツールです。
2-10. ABWを導入する
ABWとは、Activity Based Working(アクティビティ・ベースド・ワーキング)の略語で、場所や時間を自由に選べる働き方を意味します。フリーアドレスがオフィス内に限定されるのに対して、ABWはオフィス内外を問わず好きな場所で業務をおこなえる形式です。
各個人の状況に合わせて自宅・オフィス・カフェなど、好きな場所で業務をおこなえるため、モチベーションの向上が期待できるほか、通勤に伴う時間的・心理的負担も軽減されます。企業側にとっても通勤コストが削減できるのはもちろん、働きやすい環境により人材確保もしやすくなるでしょう。
導入できる業種や職種は限られますが、生産性向上が期待できる施策のひとつです。
2-10-1. ABWを導入している企業事例
実際にABWを導入している企業は増えてきています。GOOD PLACEが携わった事例のなかで、ABWを導入している企業の事例をご紹介いたします。
2-10-1-1. 株式会社リクルート 九段下オフィス
チームで仕事を進めることが多い株式会社リクルート様。組織内のみならず、目的に応じて組織を超えたチームを編成し、さまざまなプロジェクトが同時に進行しています。
そのため「チーム・アクティビティ」を優先したオフィスはどうあるべきかを考えながらコミュニケーションの場の創出を目指す環境を構築しました。
2-10-1-2. GOOD PLACE 本社オフィス
2019年移転当初、「SWITCH!」をテーマに各階それぞれに意味合いを持たせ、1日の間で気分を切り替えながら効率よく働ける環境を目指しました。
GOOD PLACE (旧コスモスモア)は、2019年に田町から恵比寿に本社を移転。ABW(Activity Based Working)とウェルビーイングの考えを取り入れ、業務や気分に合わせて自由に働く場所を選べるオフィスとなっています。
3. 生産性を向上させるオフィスグッズ
ここまでにご紹介したのは、オフィス環境を整えることによる生産性向上の手法です。しかし、会社によってはすぐに実施するのが難しいケースもあるでしょう。
業務の生産性を高めることは環境の改善以外ではオフィスグッズでも可能です。オフィスグッズを採用することでオフィス改修より低コストかつ手軽に導入することができます。生産性を高めるオフィスグッズは多岐に渡りますが、そのなかでもいくつか例を挙げて紹介いたします。
3-1. スタンディングデスク
デスクワークは椅子に座って行うのが一般的です。しかし、座りっぱなしの状態は運動不足以外にも腰痛や肩こりなどの原因になる可能性も。
スタンディングデスクを導入することで、気分によって「座る・立つ」を選べるようになり、ワーカーの同じ姿勢による負担を軽減し、気分的なリフレッシュにも繋げることができます。また、立ち上がることで運動不足が解消され、血行促進などの健康効果も期待できるでしょう。スタンディングデスクや座ったままの悪影響については下記の記事で解説しているので、ぜひご参考ください。
GOOD PLACE JOURNAL(スタンディングワーク導入で、自宅でもオフィスでも快適に働く)
3-2. モニター
業務に欠かせないモニターも生産性向上につながるアイテムのひとつ。これまでシングルモニターだった場合は、デュアルモニターを採用し複数の画面を使用することで、作業効率が向上し、複数のタスクを同時に処理できるなど飛躍的に生産性を上げることができるでしょう。さらに、ブルーライトが軽減された製品を選ぶことで、目への負担を軽減しパフォーマンス向上が期待できます。
3-3. ノイズキャンセリングイヤホン
集中して業務を行いたいと思ったときに活躍するのがノイズキャンセリングイヤホンです。特殊技術により外部の雑音をかき消してくれるため、より長い時間集中力を維持できるようになります。
3-4. エルゴノミクスキーボード
人間工学に基づいて設計されたエルゴノミクスキーボードは、入力時の手首や腕への負担を最小限に抑えてくれます。また自分が打ちやすい角度への調整なども可能で、文字の入力やプログラミングなどの業務スピードアップにつながるアイテムです。
3-5. 骨盤サポートシート
座布団のように敷くことで骨盤・尾骨を保護し、腰痛などの負担を軽減してくれるアイテムです。腰痛はオフィスワークにおいて大きな負担となってしまうため、軽減できれば十分に生産性アップが期待できるでしょう。
4. まとめ
オフィスワークでの生産性向上には、環境・ツール・グッズといくつかのアプローチ方法があります。
今回ご紹介した以外にも、オフィスの生産性を向上させる工夫は数多くありますので、オフィスレイアウトなど、オフィス内環境における生産性の見直しをされる際に今回の内容がお役に立てば幸いです。
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