ファシリティマネジメントとは?主な業務やポイントを解説
ファシリティマネジメントとは、企業が保有する建物、土地、設備、備品といった固定資産(ファシリティ)を、総合的かつ戦略的に管理することを指します。企業の資産を有効活用し、省エネの推進、社員が働きやすい環境づくりを推進することから、企業にとって重要な業務です。
本記事では、ファシリティマネジメントに関する基礎知識やメリットのほか、ファシリティマネジメントを行う際のポイントなどについて解説します。ファシリティマネジメントの仕事に役立つ資格もご紹介しますので、企業の総務担当者や経営に携わる方は、ぜひ参考にしてください。
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目次
1.ファシリティマネジメントは固定資産を戦略的に管理する「経営活動」
公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会によると、ファシリティマネジメントは「企業・団体等が組織活動のために、施設とその環境を総合的に企画、管理、活用する経営活動」と定義されています。
上記の「施設とその環境」は、建物だけでなく、土地、設備、備品、オフィス空間などを含む固定資産(ファシリティ)も指します。企業が保有するファシリティを最適化し、総合的・戦略的に管理する経営活動が、ファシリティマネジメントの取り組みです。
なお、ファシリティマネジメントは、直訳すると「施設管理」ですが、施設管理は建物の修繕・保全を指すのが一般的です。本記事で解説するファシリティマネジメントは、修繕・保全にとどまらず、あらゆる資産を経営目線で最適化する活動を意味します。
参考:公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会「ファシリティマネジメント(FM)とは」
2.ファシリティマネジメントが日本で広まった理由
ファシリティマネジメントは、日本では1980年代半ば頃から知られるようになり、バブル崩壊後に広まったといわれています。バブル崩壊前の日本は、建物が老朽化したら壊し、新しい建物を造る「スクラップ&ビルド」が主流でした。
しかし、バブル崩壊後は建設費などの資金調達が難しくなり、老朽化により建物の維持費も高くなりました。こうした経緯で、建物を含む資産をいかに有効活用するかが重視されるようになり、ファシリティマネジメントが広がっていったのです。
3.ファシリティマネジメントと混同しやすい言葉
ファシリティマネジメントは言葉の意味が広く、他の不動産関連用語と混同しやすい傾向があります。ファシリティマネジメントと混同しやすい言葉は、主に下記の通りです。
3-1.プロパティマネジメント
プロパティマネジメントは、不動産オーナーに代わって入居者の募集、賃料の集金、設備の点検、清掃などを行う業務です。建物の管理を意味するため、ファシリティマネジメントと混同しやすいですが、不動産物件の稼働率向上や維持管理といった、不動産の運営・管理を通じて建物の価値を向上させる業務である点が異なります。
3-2.ビルマネジメント
ビルマネジメントは、不動産の中でもオフィスビルや商業施設を管理運営する業務です。具体的には、清掃、設備の保全、修繕工事の管理、警備といった現場業務を指します。土地や備品を含めて総合的に管理するファシリティマネジメントとは、業務範囲が異なります。
3-3.アセットマネジメント
アセットマネジメントは、建物や土地などの不動産のほか、株式、債券といった金融資産を含む資産を管理する業務です。個人・法人の保有資産の価値向上を目的とし、売買を含む運用・管理を担う点などが、ファシリティマネジメントと異なります。
4.ファシリティマネジメントの主な業務
ファシリティマネジメントの具体的業務は多岐にわたります。主な業務は下記の通りです。
4-1.施設・設備の定期メンテナンス
施設・設備の定期的なメンテナンスは、ファシリティマネジメントの代表的な業務です。メンテナンスには費用がかかりますが、定期的に行うことで施設・設備を良い状態に保つことができ、結果として資産価値を長期的に維持することができます。
4-2.省エネの推進
ファシリティマネジメントでは、省エネの推進も重要な業務です。照明や空調のほか、社用車、壁の断熱材などに省エネ性能の優れたものを採用することで、電気代や燃料費を削減でき、なおかつサステナビリティの推進にもつながります。
4-3.セキュリティ・防災の強化
セキュリティや防災の強化も、ファシリティマネジメントの業務です。セキュリティでは不審者の侵入、サイバー攻撃などへの対策を行い、防災では耐火性や耐震性の向上、社員向けの訓練などをおこなって自然災害への備えを強化します。どちらも施設を維持し、戦略的に活用する上で重要です。
4-4.働きやすい環境づくり
オフィスレイアウトの変更、リニューアル、移転などを通して社員が働きやすい環境をつくることも、ファシリティマネジメントの業務です。現在のオフィスの使いやすさ、立地などに対する社員の意見をもとに、新たなオフィスの方向性と計画を定め、協力会社と共に実行します。各種工事が必要となるため、一定の費用と時間が必要です。
5.ファシリティマネジメントを行うメリット
ファシリティマネジメントを推進すると、企業にはさまざまなメリットがあります。主なメリットは下記の通りです。
5-1.働く環境を最適化できる
メンテナンスや省エネ、オフィス移転などを行うと、社員の働く環境を最適化できます。時代の変化や社員のニーズにもとづいて最適化されたオフィスでは、社員同士のコミュニケーションが活発になり、働きやすさと生産性の向上につながります。これにより、業績の向上、ひいては企業の成長にもつながるでしょう。
5-2.資産価値を維持できる
施設の資産価値を維持できることも、ファシリティマネジメントを行う大きなメリットです。施設・設備の定期的なメンテナンスを行うと、施設・設備が経年劣化していくスピードを下げることができます。それによって施設・設備を良い状態で長く使うことができ、企業の収益向上にも貢献します。
5-3.施設の維持コストを最適化できる
施設の維持コストを最適化できることも、ファシリティマネジメントのメリットです。ファシリティマネジメントの一環で省エネやオフィスのリニューアルを行うと、電気代の抑制、不要スペースの有効活用などにつながります。経営に関わる各種コストの最適化は、企業が前進する力となります。
5-4.CSRを推進できる
ファシリティマネジメントを行うとCSRを推進でき、企業価値の向上につながるでしょう。建物の機器や設備を更新する際、環境性能の高いものに替えると、環境負荷の低減につながります。このメリットは特に工場や研究所といった、機器や設備が大規模となる施設で顕著に表れますが、オフィスでも設備などの省エネ推進によってCSRを果たしていくことは可能です。
6.ファシリティマネジメントを行う際のポイント
ファシリティマネジメントを行う際に気を付けたいポイントは、主に下記の3つです。総務部門の担当者などファシリティマネジメントに携わる方は、ぜひ参考にしてください。
6-1.施設のLCCを把握する
ファシリティマネジメントを行う際は、施設のLCCを把握することが大切です。LCCとはLife Cycle Costの頭文字を取った言葉で、施設の計画・設計・施工・維持管理・解体などにかかる費用の総額を意味します。
施設のLCCは、施設を完成させるまでよりも、完成後のランニングコストのほうが多くかかります。ファシリティマネジメントを推進する過程では、LCCを把握し、ランニングコストを抑えながら運営管理していくことが重要です。
6-2.3つのレベルで計画する
ファシリティマネジメントは、「経営」→「管理」→「日常業務」の3つのレベルで計画、実行していく必要があります。各レベルで計画する内容は下記の通りです。
〈ファシリティマネジメントの3つのレベル〉
- 経営:ファシリティマネジメント全体の戦略と方向性を計画する
- 管理:ファシリティマネジメントが効率的かつ低コストで進められるよう計画する
- 日常業務:経営と管理の方向性にもとづき、日常のファシリティマネジメント業務を具体的に計画する
上記の3つでは、まず経営のレベルで戦略と方向性を計画し、管理や日常業務へと落とし込んでいくことが大切だと考えられています。
ただし、日常業務の中に重要な改善事項があることも少なくありません。トップダウンだけでなく、状況によってはボトムアップで最適化に取り組むことが大切です。
参考:公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会「ファシリティマネジメント(FM)とは」
6-3.PDCAを回す
ファシリティマネジメントは、PDCAを回して継続的に改善していく必要があります。
最初に立てた計画が最善であるとは限りません。施設、設備、働く環境の最適な状態とは何かを常に考え、計画(Plan)・実行(Do)・評価(Check)・改善(Action)を繰り返してください。
7.ファシリティマネジメントに役立つ資格
ファシリティマネジメントを行う上で役立つ資格として、主に下記の3つがあります。ファシリティマネジメントの担当者は、取得を検討してみてはいかがでしょうか。
7-1.認定ファシリティマネジャー
認定ファシリティマネジャーは、公益社団法人日本ファシリティマネジメント協会、一般社団法人ニューオフィス推進協会、公益社団法人ロングライフビル推進協会が合同で実施している資格制度です。認定ファシリティマネジャーには、ファシリティマネジメントの戦略と計画の立案から、施設を利用する社員の満足度調査・分析、改善まで行える知識と能力が求められます。
ファシリティマネジメントに携わる総務部門の担当者は、まずは認定ファシリティマネジャーの資格を取得するのがおすすめです。また、オフィス構築などを外部に依頼する際は、認定ファシリティマネジャーが在籍する企業を依頼先に選ぶといいでしょう。
7-2.建築・設備総合管理士(ビルライフサイクルマネジャー)
建築・設備総合管理士(ビルライフサイクルマネジャー)は、公益社団法人ロングライフビル推進協会が実施している資格制度で、経年劣化や環境変化などに対応し、施設の長寿命化につなげることができる人に与えられます。5年以上の実務経験があれば講習を受けるだけで取得できるため、総務部門の実務経験者は取得しておくことをおすすめします。
7-3.オフィスセキュリティコーディネータ
オフィスセキュリティコーディネータは、一般社団法人ニューオフィス推進協会が実施する資格制度です。オフィスセキュリティに関する幅広い知識を持ち、「オフィスセキュリティマーク認証」の取得申請を支援できます。
オフィスセキュリティマーク認証とは、経営資産の保護と、リスクに対する適切な対応・改善などを行なっている組織に与えられます。近年、オフィスセキュリティの重要性は高まっていますので、ファシリティマネジメントに携わる方は取得しておきたい資格です。
8.ファシリティマネジメントを推進し、働く環境を最適化しよう
ファシリティマネジメントは、企業が保有する資産を適切に管理する重要な業務です。ファシリティマネジメントの業務は多岐にわたりますが、それぞれ適切に実行することで、社員が働きやすい環境の実現、各種コストの削減、CSRの推進といったメリットが得られます。総務部門の担当者は、ファシリティマネジメントを正しく実行し、社員の働く環境を最適化していきましょう。
GOOD PLACEには、多くの認定ファシリティマネジャーが在籍しており、オフィス構築をはじめとしたお客さまのファシリティマネジメントをサポートしています。ファシリティマネジメントに関するお困り事がありましたら、お気軽にご相談ください。
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