ワーケーションとは?基礎知識や企業の事例、導入のポイントをご紹介!
テレワークやハイブリッドワークなど多様で柔軟な働き方が浸透する近年、「ワーケーション」や「ブレジャー」という言葉が注目を集めています。
多様な働き方を認め、導入を検討することは、今後の経営や人材確保においても重要な要素となってくるでしょう。当記事では「ワーケーション」のメリット・デメリットから、実際の導入事例を交えてご紹介します。
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目次
1.ワーケーションとは?わかりやすく説明
ワーケーションとは「仕事/Work(ワーク)」と「休暇/Vacation(バケーション)」を組み合わせた造語です。時間や場所に縛られない働き方が浸透したことで、さらに一歩先の自由な働き方として注目されています。
1-1.ワーケーションとは日常から離れた場所で行うテレワーク
ワーケーションとは、観光地や海外など日常とは異なる場所で仕事をするテレワークの相称です。仕事をしながら自身の時間も同時に楽しめるため、ワークライフバランスの両立がしやすい就業スタイルとして人気を集めています。
1-2.ワーケーションの分類
ワーケーションには大きく分けて「休暇型」「業務型」と2つの分類があります。
<休暇型>
休暇型は主にノマドワーカーなど、個人単位で業務をおこなう人ができる働き方で、観光地やリゾート地で余暇時間を楽しみながら自分のペースで仕事をするスタイルです。
前提として休暇が目的にあり、費用などは自己負担となります。どちらかといえば、休暇の合間に仕事をおこなうというイメージが近いでしょう。そのため個人または会社の福利厚生として導入されるケースが多いです。
<業務型>
一方、業務型は仕事を目的にして、シェアオフィスやサテライトオフィスを活用し、前後の余暇時間を異なる地で楽しむという働き方。
企業の受け入れ先と連携した地域活性化や、リフレッシュ環境による従業員のモチベーションアップなど、あくまで組織運営やビジネスを主体として考えられています。
加えて業務型には
- ・地域活性化に貢献する「地域課題解決型」
- ・他のメンバーと交流しながら実施する「合宿型」
- ・各地のサテライトオフィスで働く「サテライトオフィス型」
などの種類があります。
1-3.ワーケーションが注目される3つの理由
コロナ禍をきっかけにワーケーションの認知度はどんどん広がっています。注目を集めている理由はいくつかありますが、代表的な要因は下記の3つです。
1-3-1.テレワークの普及
時間や場所に縛られないテレワークが普及したことで、より快適な環境で仕事ができるワーケーションにも注目が集まるようになりました。
1-3-2.重視されるワークライフバランス
働き方と同時に、仕事とプライベートの両立を重視する人が増えたことで、休暇と仕事を並行できるワーケーションの需要が高まっています。
普段のオフィスや自宅など見慣れた光景から離れ、自分で選択した自由な環境で仕事ができるため、よりワークライフバランスが取りやすく従業員の満足にも繋がりやすいのです。
1-3-3.地域活性化
ワーケーションは従業員のモチベーションアップと並行して、地域との結び付きを固め、新たな地域ビジネス開拓のチャンスに繋げられる可能性も高くなります。
また地域活性化の推進だけでなく、個人のライフスタイルやワークスタイル、健康やウェルビーイングなど昨今注目されているSDGsで掲げられている幅広い領域に関わるため、今後の参入企業増加が期待されています。
1-4.ワーケーションの始まりはアメリカ
ワーケーションの起源は明確にはされていませんが、2000年代のアメリカで始められたと言われています。
アメリカはコロナ禍以前からテレワークが浸透しており、仕事が終わったあとに家族との時間を大切にできるよう、ワーケーションの概念が誕生したというのが通説です。
1-5.ワーケーションの認知度は年々向上
テレワークの浸透に伴い、ワーケーションの認知度は年々広がっています。国土交通省の観光庁が2021年度に行った調査によれば、2020年度と比較してワーケーションの認知度・導入率ともに上昇していたとのことです。
テレワーク導入率
2020年度(令和2年):38.3%
2021年度(令和3年):38.0%
ワーケーション認知率
2020年度(令和2年):48.5%
2021年度(令和3年):66.0%
ワーケーション導入率
2020年度(令和2年):3.3%
2021年度(令和3年):5.3%
参照元:今年度事業の結果報告_令和4年3月17日(国土交通省観光庁)
業種や企業規模などによって導入率に幅は出ていますが、ワーケーションの存在は着実に広まっているといえるでしょう。
2. 新しい働き方として注目を集める「ブレジャー」
新しい働き方として注目を集める「ブレジャー」
2-1. 出張先で休暇をとるブレジャー
休暇先やサテライトオフィスで一定時間テレワークを行うワーケーションに対して、ブレジャーは出張先など業務目的の出先で滞在期間を調整し、業務時間外を休暇として楽しむ働き方です。
2-2. 企業の導入ハードルが低いブレジャー
各地で業務を行うワーケーションと比べると、ブレジャーは出張先をそのまま休暇場所として活用できるため、管理面も含めて導入ハードルは低いと言われています。
コワーキングスペースやサテライトオフィスなどのランニングコストも不要なので、維持費の面でもコストパフォーマンスに優れています。
3.企業におけるワーケーションやブレジャーのメリット
少子高齢化により人材確保が難しいとされている現代において、ワーケーションやブレジャーは従業員だけでなく、企業側にも多くのメリットがあります。
3-1. 有給休暇の取得促進
ワーケーションを導入すれば、就業場所をそのまま旅行先としても活用することができます。業務外の滞在期間を延長するなどの体制を整えれば、有給休暇取得が手軽になり有給休暇取得率の向上にも繋がっていくでしょう。
3-2. ワークライフバランスの改善につながる
働く場所に縛りがないワーケーションは、従業員に多くの選択肢を与えられる働き方です。
家族や趣味の時間を大切にしたい、通勤ストレスを軽減したいなどプライベートな事情に寄り添った環境を提供できるため、ワークライフバランスの改善が期待できます。
従業員にとって魅力的な待遇を提供することができるため、「ワーケーションができる企業」として、優秀な人材を確保しやすくなるのも大きな利点のひとつです。
3-3. リフレッシュ効果がある
ワーケーションは文字通りバケーションの側面も含んでいます。
リゾート地や自然豊かな地域など、オフィスでは味わえない雰囲気を体感しながら働けるため、心身のリフレッシュと共に従業員のモチベーションアップに効果的です。
平日休日に関わらず、業務以外の時間はバケーション気分で楽しめるのもワーケーションが人気を集める理由のひとつでしょう。
3-4. イノベーション創出
国内外各地と関わりながら働けるワーケーションは、新たなイノベーションを創りだす環境としても適しています。
従来のオフィス勤務だけでは発想できなかった企画やアイデアも、開放的な空間・地域の文化に触れることで、創出できる可能性が高くなるのです。
4. 企業におけるワーケーションやブレジャーのデメリット
一方、ワーケーションを導入することで生じるデメリットもあります。テレワークと共通する部分も多いのですが、就業場所が一定ではない分、ワーケーションの導入と定着は難易度が少し高めです。
4-1.情報管理のリスク
ワーケーションは従業員が各地で業務を行うため、情報漏洩などセキュリティ面の管理・対策が難しいという課題があります。テレワーク環境と同じく、セキュリティ面を管理できる対策を検討しなければなりません。
4-2.従業員のコミュニケーション不足
従業員がそれぞれ望むエリア・地域で働くワーケーションでは、オフィスでのような直接的なコミュニケーションが減少するため、社内コミュニケーションが希薄になる可能性があります。対面だからこそできた業務の合間の他愛ない日常会話などの機会も少なくなるため、オンラインでも気軽に社内交流ができる仕組みづくりが重要となります。
4-3.コストがかかる
ワーケーション環境を整えるためには、PCやWEBカメラ・ネット環境のほかテレワークに必要な設備を用意しなければなりません。また必要に応じて有料のクラウドサービスを利用するなど、ある程度のランニングコストも想定しておきましょう。
4-4.労働時間の不確定さ
作業状況や労働状況を目で見ることができないので、労働時間・残業時間などの把握が難しいという課題もあります。
従業員の満足度が向上しても、業務効率や生産性が落ちては本末転倒です。各々の自律性を高めると同時に、ワーケーション環境でも労働時間を管理できる環境の構築が求められます。以上がワーケーションにおける代表的な課題です。
いずれもテレワーク構築に準じたシステムやサービスを活用すれば解消が期待できます。企業側・従業員側の双方にとって、ワーケーション環境が実現できれば、大きなメリットとなるのは間違いありません。
5.ワーケーションに取り組む企業の例
ここからワーケーションを採用している企業事例を3つほどご紹介いたします。同じワーケーションでも企業によって目的や内容が異なるため、自社の環境にあった制度設計の参考にしてみてください。
<事例Ⅰ:ヤフー株式会社>
イーコマースサイトで有名なヤフー株式会社は、一切制限のないワーケーションを導入している企業のひとつ。働く場所を自由に選べる「どこでもオフィス制度」を活用し、日本全国どこに住んでいてもOKとのこと。
出社が必要な場合は月に15万円を上限に交通費を支給し、コアタイムなしのフルフレックス制度を採用。限りなく自由な環境下で働ける体制を構築しています。
参照元:一般社団法人 日本経済団体連合会(企業向けワーケーション導入ガイド-場所にとらわれない働き方の最大活用)
<事例Ⅱ:日本航空株式会社>
日本航空株式会社(JAL)は、2017年より休暇型のワーケーションを導入しています。
同社は2015年時点から働き方改革に取り組んではいたものの、シフトで有休が取りやすい現場とデスクワークなどの間接部門で有給休暇取得率に差ができてしまっていたそうです。
そこで休暇中に仕事ができるようワーケーション体制を導入し、結果として間接部門の有休取得率も向上。働きやすさはもちろん社員のモチベーションアップにも成功しています。
参照元:国土交通省 観光庁(新たな旅のスタイルワーケーション&ブレジャー)
<事例Ⅲ:ランサーズ株式会社>
ランサーズ株式会社はビジネスマッチングサイト「ランサーズ」を運営している会社です。働き方改革が始まる以前から自由な働き方を採用しており、働く場所や時間に制限を設けておらず、時代に先駆けたワーケーションを体現しています。
参照元:国土交通省 観光庁(新たな旅のスタイルワーケーション&ブレジャー)
上記以外にもワーケーションを導入する企業は、年々増加の一途を辿っています。
6.ワーケーション先進自治体の長野県、和歌山県、鳥取県
ワーケーションを推進するのは企業だけではありません。
ワーケーションを活用した地域活性化を目指している自治体もあり、ワーケーションの滞在先として様々な施策を行っています。とくにワーケーションを先進的に進めている自治体は長野県・和歌山県・鳥取県の3県です。
<長野県>
長野県立科町では、地元の雇用増加を目的に2016年よりテレワーク推進事業を行っています。
県内にある宿泊施設でテレワークができるようインターネット環境を整備し、都心部の仕事を長野県内でも行える体制を整え、町と住民・企業が一体となった事業に参画する企業を募ったそうです。
こうすることで都内の企業や仕事を県内に呼び込み、子育て世帯・高齢者・介護者など多様な人材が町のあらゆる場所でICTを活用した仕事を通じ、地元の雇用機会の創出を図っています。
<和歌山県>
作業場所の制約を受けにくいIT企業を対象に2001年頃から誘致に力を入れはじめた和歌山県。現在はITベンチャー企業数社が県内にサテライトオフィスを設置しており、ワーケーション先進地と呼ばれています。
和歌山県白浜町がワーケーションを推進している背景として、年間300万人以上が訪れる観光地であったことや、南紀白浜空港と羽田空港が60分で行き来できる距離にあることなど、複数の要因が起因しています。
こうした環境もあって元々IT企業の誘致を積極的に行っており、時代の変化に先駆けてワーケーションを推進しているそうです。
<鳥取県>
鳥取県は人口減少の課題を解決すべく、長年さまざまな取り組みを行っています。
令和2年度に「とっとりワーケーション推進事業」を立ち上げ、ワーケーション先としての受入体制の整備・プログラム造成・参画企業との連携強化など、本格的な施策を実施。令和4年には「ふるさと来LOVE(クラブ)とっとり関係人工創出事業」や「とっとりとの関係人口を増やす事業」など、多彩な方向からワーケーションを推し進めています。
7.企業がワーケーション制度を取り入れるために整備すべきポイント
ここまでの内容を軸に、企業がワーケーションを導入するために整備しておくべきポイントは下記の通りです。
1:情報管理の徹底とセキュリティ対策
2:テレワークに対応できる評価制度
3:労務管理体制の見直し
4:ワーケーションを行うための通信環境
5:社内コミュニケーション対策
6:交通費や宿泊費、許容エリアなど関連規定の策定
7:災害時や非常時の対応・補償
上記のポイントを踏まえつつ、どのような形でワーケーションを取り入れるのかを十分に検討し、自社に合った働き方を見つけていきましょう。
8.自由な働き方を実現するクルマ、mobicaでワーケーション
観光地やリゾート地など好きな場所で働けるのは、ワークライフバランスの充実といった面からも非常に望ましい状況です。
そうした中で宿泊施設にも縛られず「好きな場所へ移動しながら働ける、自分だけのワークスペース」という選択肢もあります。そこでお勧めしたいのが当社が始めたワーケーションカー「mobica(モビカ)」です。
mobicaはハイエースやN-VANといった市販車を、ワークスペースとして架装したものです。車内にはポケットwifiや電源、アーム式PCモニターなど業務に必要な設備を搭載。独自のカスタマイズによって車両内が快適な自分だけのワークスペースになります。
もちろん公道を走行することも可能。自分の好きなタイミングで好きな場所へ行き、好きな環境で業務に取り組むことができます。
「もっと自由に、より豊かに」というコンセプトのもと、不動産の概念から脱却して、移動できる”可動産※”「mobica」を通して場所にとらわれない自由な働き方が世の中に浸透し当たり前になっていくことで、働く皆さんの心・生活がより豊かになることを期待しています。
※土地及び土地に定着したものが「不動産」と表現することに対し、移動できるものを「可動産」としています。
mobicaは2023年夏よりカーシェアリングサービスとして提供を開始。興味がある方はお気軽にお問い合わせください。
9.まとめ
ワーケーションやブレジャーなど柔軟性を取り入れた働き方は、今後もどんどん浸透していくでしょう。業務の効率化や生産性の向上、採用活動での差別化など、様々な側面で導入が求められる制度でもあります。大切なのは自社に合ったやり方で導入を進めるということ。ワーケーションやブレジャーの検討に際して、今回の内容が参考になれば幸いです。
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