ABWとは?フリーアドレスとの違いやメリット・デメリットを紹介

コロナ禍以降、さまざまな業界で、リモートワークをはじめとした多様な働き方を取り入れる動きが見られます。その中のひとつが、自由な環境で業務を行えるABWです。
ABWはフリーアドレスと混同されることが多いですが、両者には明確な違いがあります。
当記事ではABWとフリーアドレスの違いのほか、ABWのメリット・デメリット、ABW導入の流れなどを詳しく解説。また、ABWの導入事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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目次
1. ABWとは、業務に応じて働く場所や時間を自由に選択できる働き方のこと
ABWとはActivity-Based Workingの略で、従業員が業務内容に応じて場所や時間を自由に選択して働ける、柔軟な働き方のことです。集中作業やチームミーティングなど、業務に適した空間を選ぶことで生産性や創造性が高まることが期待できます。オフィスで固定的で働く従来の方式とは異なり、従業員の満足度を高める新しい働き方として注目されています。
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2. ABWとフリーアドレスとの違い
ABWに近い意味を持つ言葉に、フリーアドレスがあります。ABWとフリーアドレスの主な違いは下記のとおりです。
2-1. 働ける場所や時間が違う
ABWとフリーアドレスは、働ける場所や時間が違います。ABWではオフィス以外にも、自宅やカフェなど、業務内容に応じてさまざまな場所で勤務が可能です。また、働く時間も柔軟に選べる点が特長です。
一方、フリーアドレスはオフィス内で自分の固定席を持たない仕組みを指し、働く場所は基本的にオフィスに限定されます。
2-2. 目的や考え方が違う
ABWとフリーアドレスは、目的や考え方も異なります。ABWは、生産性や働きやすさの向上が主な目的で、従業員が業務に適した環境を選べるようにして、集中力や仕事の質を高めることを目指すワークスタイルです。
一方のフリーアドレスは、生産性向上やコミュニケーション促進も重視していますが、主にオフィススペースの効率的な利用を目的としており、オフィスの運用コスト削減に焦点をあてています。
フリーアドレスについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
フリーアドレスとは?メリット・デメリットと導入のポイントも解説
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3. ABW導入による5つのメリット
ABWを導入することで働き方が変わり、企業と従業員の双方にメリットをもたらします。従業員の満足度向上やモチベーションアップ、採用活動につながるなど、多面的なメリットが期待できます。ここでは、ABW導入することで得られる5つのメリットを解説していきます。
3-1. 目的に応じた働き方ができるため、生産性が向上する
ABWでは、業務内容に応じて個人が場所を選べるため、作業に集中しやすくなります。データ分析など個人作業は静かな個室で、企画会議はオープンなスペースでチームでなど、環境を切り替えることで効率的に仕事を進めることができます。
3-2. 従業員の満足度とモチベーションアップにつながる
ABWを導入すると、従業員の満足度向上とモチベーションアップも期待できます。ABWは、従業員の働き方に対する選択肢を広げるワークスタイルです。場所・時間を選択できることは、従業員のワークライフバランスの向上と満足度・定着率の向上につながり、モチベーションアップにも効果的です。
3-3. 社内コラボレーションが促進され、イノベーションの機会を生む
固定席を持たないため、異なるチームや職種のメンバー同士が出会い、アイデアを共有する機会が増えます。多様な視点が加わったり、会話が増えたりすることで新しい発想が出てくることもあるでしょう。オープンスペースなどをつくり、カジュアルな会話ができる場を設けることもできます。ABWでは、部署や職種を越えたコミュニケーションが、自然に発生する環境がつくりやすいです。
3-4. 優秀な人材獲得の助けとなる
リモートワークや多様な勤務形態が一般化する中で、ABWのように場所や時間に縛られない働き方を提供できる企業は優秀な人材を集めやすく、採用力強化につながります。
3-5. スペース効率を見直すことでオフィスのランニングコストを削減できる
ABWでは、固定席を廃止し、業務内容に応じた共有スペースを設けるため、オフィス全体のスペース効率が向上します。
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4. ABW導入による5つのデメリット
ABWには多くのメリットがある一方で、導入にはいくつかの課題も存在します。主なデメリットは下記の5つです。
4-1. 従業員のマネジメントの難易度が上がる
従業員がさまざまな場所で働くため、管理者は業務状況の把握が難しくなります。チャットなどで気軽なコミュニケーションを重ねたり、適切な目標設定と確認をしたりする体制が必要です
4-2. コミュニケーションの促進には運用面でも工夫が必要
固定席がないため部署を越えた交流がしやすくなる一方、チーム内の自然なコミュニケーションは減る可能性があります。日常的な情報共有やコミュニケーションの機会を設けるための、オンライン会議やチャットアプリの導入、オフィス内交流エリアの設置など、工夫をすることでスムーズなコミュニケーションを維持できます。
4-3. 実現までにコストと時間がかかる
ABWの導入には、オフィスレイアウト変更や従業員へのルール浸透などの準備が必要です。それには、初期投資と1年程の計画期間が求められ、全体のプロジェクト管理が重要です。
4-4.適切なセキュリティ対策が必要
ABWを導入する際には、適切なセキュリティ対策が欠かせません。ABWでは、従業員が社外で働くことが増えるため、情報漏洩やパソコンの紛失リスクが高まります。想定できるリスクに対し、適切な対策を講じることが不可欠といえるでしょう。
4-5.十分に活用されない可能性がある
ABWを導入しても、そのメリットが十分に活用されない可能性があります。働く場所と時間が選べるようになっても、従業員によっては結局同じ場所と時間で働くケースがあるためです。こうしたケースが多くなると、ABWが形骸化してしまうため注意しましょう。
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5. ABW導入の流れ
続いては、ABW導入の一般的な流れについて解説します。導入を検討している方は、参考にしてください。
5-1. ABW導入の目的を明確にする
ABW導入によってどんなことを達成したいのか、目的を設定にすることが重要です。生産性の向上、コスト削減、従業員のコミュニケーション促進など、目的を明確に設定することが導入後の成果を測る上でも必要です。
5-2. 自社の状況把握と調査を行う
次に、自社の現状を把握します。オフィスの出社状況、業務に適した環境、業務フローなどの洗い出しをし、課題や改善ポイントを確認します。
5-3. ABW導入に必要な施策やスケジュール・予算を明確にする
ABW導入には、全体の計画を立てることが重要です。やるべき施策をリストアップし、スケジュールを立てましょう。予算についても、初期費用と運用費用を見積もることがポイントです。
5-4. オフィスレイアウトを決める
ABWの施策の一環でオフィスの改修を実施する場合は、オフィスレイアウトを決めてください。目的に応じたゾーニングを行い、オフィスのレイアウトを再設計します。集中スペース、コラボレーションスペースなどのバランスを、慎重に検討することがポイントです。
5-5.ネットワーク整備・セキュリティ対策を検討する
オフィスレイアウトを決めたら、それに対応したネットワーク整備やセキュリティ対策を検討しましょう。リモートワークを含むABWを実現するため、パソコンを社外に持ち出しても問題とならないようにすることが大切です。場合によっては、サテライトオフィスの導入も検討してください。
5-6.ABWに関するルール・制度を整備する
ABWを導入する際には、事前にルールや制度の整備が必要です。就業規則や評価制度を見直し、ABWに適したルールを策定してください。従業員が新しい働き方をスムーズに受け入れられるようにすることが重要です。
5-7.改善をしていきながら運用していく
運用開始後も従業員の声や業務の変化に応じて、オフィス環境やルールを見直して運用していくことが大切です。定期的にアンケートやヒアリングをしたり、使用頻度が低いエリアを把握したりして課題を発見し、柔軟に改善していくことでより良いオフィス環境づくりにつながります。
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6.ABWを導入する際のポイント
ABWを導入する際には、押さえておきたいポイントがあります。主なポイントは下記の2つです。
6-1. 従業員の意見を取り入れる
ABWをスムーズに導入するには、導入の過程で従業員の意見を取り入れることが重要です。事前にアンケートやヒアリングを行い、オフィスや働き方に対する従業員のニーズを明確にすることで、ABWを現場の状況に応じたものにできます。
6-2.専門家にサポートしてもらう
ABWの導入過程では、ゾーニングやレイアウト設計といった専門知識が必要です。外部の専門家やコンサルタントに依頼して失敗のリスクを減らし、スムーズな導入を目指しましょう。ABWの導入効果を高めるためにも、専門家のサポートは重要です。
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7.ABWの導入事例
続いては、ABWを導入した企業の事例を4つご紹介します。ABWの導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
7-1.株式会社リクルート様
組織を越えたチームでプロジェクトを進行するリクルート様ならではの「チーム・アクティビティ・ベースド・ワーキング(TABW)」を導入。5棟構造の築古ビルに、それぞれのスペースの特徴を活かしたバリエーションある空間を作りました。
詳しい記事はこちら▼
https://www.goodplace.co.jp/works/works169/
7-2.TMES株式会社様
TMES株式会社様は、従業員の「能動的な行動」「帰属意識向上」「会話環境の充実」を促進するべく、2024年にABWを導入しました。オフィスをフリーアドレスにするだけでなく、ワークスペースのバリエーションを増やし、従業員の働きやすさを向上させています。
オフィスづくりでは、フロアを「集中する実務エリア」と、コミュニケーションを重視する「音を出してもいいエリア」に分割しました。業務の目的や内容に応じて働く場所を柔軟に選択できることには、ABWの特長が反映されているといえるでしょう。
詳しい記事はこちら▼
TMES株式会社 本社オフィス
7-3.株式会社JSOL様
株式会社JSOL様は、2022年にABWを導入。オフィスづくりでは、従業員の働き方を「協働」「集中」「リラックス」に分類してレイアウトを検討しました。リアルなコミュニケーションによる共創を軸としつつ、ワークスペースを区別することで従業員の快適性を追求しています。
ABWエリア
なお、窓際の空間は「ABWエリア」として、従業員が場所を自由に選べるようにすることでオフィスに活気を与えています。
カフェスペース
カフェスペースはABWエリアと統一感を持たせつつ、開放感を演出。
オープンイベントスペース
オープンイベントスペースは、さまざまな社内イベントに活用できるスペースです。目的に応じて可変できるため、柔軟に活用することができます。
詳しい記事はこちら▼
株式会社JSOL 本社オフィス
7-4.株式会社GOOD PLACE
恵比寿に本社を置くGOOD PLACE。以前よりノートPCの貸与、固定電話の廃止などテレワークに対応し、2019年の恵比寿移転時にABWの考え方を積極的に取り入れたオフィスを開設しました。現在は、オフィスはもちろん自宅やコワーキングスペース、カフェなどでの業務も可能な体制にし、従業員の業務や状況に合わせた柔軟な働き方が可能になっています。
受付カウンターとカフェラウンジ
受付カウンターとビッグテーブルを一体化させたことで、移動前後に立ち寄って作業ができたり、従業員同士気軽に会話をしながら作業を行えたりします。窓側にはテーブル席があり、個人作業はもちろん、テーブルを合わせることでまとまっての作業も可能です。
ファミレスブース
少人数の会議・打合せや、テーブルに資料を広げて一緒に作業を行うことができるファミレスブース。背もたれが隣のブースとゆるやかに空間を区切り、思いのほかプライベート感を演出できます。目的に合わせて周囲の環境を選べるため、社員もモチベーション高く業務に集中することができます。
リフレッシュスペース
各階にリフレッシュスペースを設けており、隙間時間に休憩をとりながら作業をすることが可能です。併設されたキッチンでお茶を入れたりしながら、会話も生まれるエリアです。
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8. ABWを効果的に導入し、会社を成長に導こう
ABWは、柔軟で効率的な働き方を実現し、会社の成長を加速させることができるワークスタイルです。一方で、従業員のマネジメントが難しくなる、適切なセキュリティ対策が必要といったデメリットには十分注意する必要があります。
ABWを効果的に導入し、社員と会社の双方が成長できる環境の構築を目指しましょう。
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