フリーアドレスのメリットが出ない5つの原因と、見直しポイント
フリーアドレスとは、固定席を持たず、その日の業務に合わせて自由に席を選ぶワークスタイルです。コミュニケーション活性化やスペース最適化といったメリットが期待される一方、GOOD PLACEが2025年12月にフリーアドレス勤務者441名を対象に行った調査では、81%が座席運用に何らかの不満を感じていることが明らかになりました。うまくいかない背景にはさまざまな要因が考えられますが、設計や運用の見直しでメリットを引き出せるケースも少なくないようです。
1. フリーアドレスが「機能しない」のはなぜか——よくある5つの原因
フリーアドレスを導入したものの、期待したほどメリットを感じられていない——そんな声は珍しくありません。多くの企業でよく見られる、5つの原因を見ていきましょう。
1-1. 目的が曖昧なまま導入した
「他社もやっているから」「働き方改革の一環として」という理由だけで導入すると、形骸化しやすいものです。フリーアドレスはあくまで手段であり、それ自体が目的にはなりません。
目的が定まらないまま座席だけを自由にしても、なぜフリーアドレスにしたのかが従業員に伝わらないことがあります。結果として、いつもの席に固定化してしまうケースは、多くの企業で起こりやすい傾向にあります。
1-2. 向かない職種・部署に一律展開した
経理・法務・人事のように機密情報を扱う部署、専用機材や大型モニターを使う開発・デザイン職、固定電話対応が多い職種は、フリーアドレスと相性が悪い傾向があります。
こうした部署にも一律で展開してしまうと、かえって業務のしやすさが損なわれ、結果的に固定席へ戻ってしまうこともあります。全社一律ではなく、部署ごとの向き不向きを見極めることも一つの選択肢です(見極め方は後述します)。
1-3. 集中できる環境が整っていない
オープンなレイアウトは、交流のしやすさと引き換えに、集中のしにくさを抱えやすい側面があります。声や人の動きが気になり、作業に集中しようとするたびに注意が途切れてしまうことも少なくありません。
実際、フリーアドレス勤務者を対象にしたGOOD PLACEの調査でも、座席に対する不満の1位は「静かに作業できる席が足りない」で29.7%という結果が出ています。
1-4. 座席が「なんとなく固定化」してしまった
明確なルールがないと、心理的に「いつもの席」に戻りやすくなります。毎朝の席探しにストレスを感じるようになると、結果として同じ場所に座る人が増え、固定化が進みやすくなります。GOOD PLACEの調査でも、座席運用の不満として「同じ人が同じ席に座ることが多く、固定化している」を挙げた人が14.5%いました。ルールがないまま運用が続くと、無意識のうちに座席が固定化していく傾向がうかがえます。
1-5. 新人へのフォローが手薄になりやすい
新人にとって、分からないことをすぐ確認できる相手が近くにいることは、日々の安心感につながります。業務に不慣れな時期は些細な判断にも迷いが生じやすく、頼れる上司や先輩がそばにいるかどうかが、仕事のしやすさを左右します。フリーアドレスでは、上司や先輩が今どの席にいるか分からず、相談したいタイミングで捕まえられない——相手も会議や他部署対応で動き回っていることが多く、意図的な配慮不足というより、フリーアドレスという仕組みが生みやすい構造的な特性ともいえます。
同調査では、在籍3年未満の社員のうち、「近くにいてほしい」(28.8%)と「同じエリア内にいてほしい」(40.0%)を合わせて68.8%が、上司との近い距離感を求めているという結果も出ています。
2. データで見るフリーアドレスの実態——GOOD PLACEの調査から

ここまで挙げた5つの原因、「うちも当てはまるかも」と感じた方もいるかもしれません。ここからは、実際の調査データをもとに、その実態をもう少し詳しく見ていきます。
2-1. オフィスには満足しているのに、座席運用には81%が不満
GOOD PLACEが行ったフリーアドレス勤務者への調査では、オフィス全体への満足度は57.8%だった一方、座席運用そのものへの不満は81%にのぼりました。この2つの数字のギャップを見ると、全体への評価と座席運用への評価は、分けて考えたほうがよさそうです。
2-2. 不満の1位は「集中できる席が足りない」
先ほど触れた通り、座席への不満で最も多かったのは「静かに作業できる席が足りない」で29.7%でした。ここで見えてくるのは、単純に設備を増やせば解決する話ではないという点です。
調査では、集中ブースを設置しているオフィスは49.2%あるうち、実際に利用したことがある人は32.5%にとどまり、保有と利用の間に約17ポイントのギャップがありました。個室型の集中ブースをただ設置するだけでは埋めきれない部分があり、どのような集中のしかたが求められているのかを掘り下げる必要があります。
2-3. 予約システム導入職場の満足度は77.2%——自由選択型より20ポイント高い
フリーアドレスを採用しているうち、座席予約システムを導入している職場の満足度は77.2%で、自由選択型よりも20ポイント上回りました。
「自由に選べること」自体は魅力に思えますが、実際には毎朝の席探しや、希望の席が取れないストレスが積み重なりやすいという側面もあります。フリーアドレスの「自由」は、それを支える仕組みとセットになって初めて機能しやすくなるようです。
2-4. 在籍年数によって、上司との距離感の希望は異なる
在籍年数によって、オフィスに求めるものは大きく異なります。在籍3年未満の若手社員では、上司には「近くにいてほしい(28.8%)」と「同じエリア内にいてほしい(40.0%)」という結果に。合計68.8%が上司との近い距離感を求めているという結果が出ています。
「全員が同じ環境を求めている」という前提で設計してしまうと、意図せず特定の層にストレスを与えてしまう可能性があります。この点は、次に紹介する「向き不向きの見極め方」にもつながる視点です。
・座席への不満1位「静かに作業できる席が足りない」29.7%
・予約システム導入職場の満足度77.2% vs 自由選択57.1%。座席の「決め方」だけで、約20ポイントの差
・在籍3年未満の68.8%が上司との近い距離感を求めている。
3. フリーアドレスが向かない組織・職種の見極め方

「うちの会社はそもそも合っているのか」——導入前の方にも、すでに導入して悩んでいる方にも、判断の軸として使える3つの切り口をご紹介します。
3-1. 職種軸——固定席のほうが機能する職種がある
経理・法務・人事など機密情報を扱う部署、専用機材や大型モニターを使う開発・デザイン職、固定電話対応が多い職種は要検討です。
「向かない=導入できない」ではなく、その部署だけ固定席を残す部分導入も選択肢のひとつです。
3-2. 組織軸——若手比率・OJT文化が強い組織
OJTで育てる文化が強い組織では、「隣で見て学ぶ」という環境が失われやすいリスクがあります。若手が多い成長フェーズの組織ほど、完全フリーアドレスよりも段階的な設計が向いている可能性があります。
先ほどの調査データ(在籍3年未満の68.8%が上司に「近くにいてほしい(28.8%)」「同じエリアにいてほしい(40.0%)」と答えた)は、この組織軸を考えるうえでも参考になります。
3-3. 業務軸——ペーパーレス化・専用システムへの依存度で判断する
紙書類が多い、または特定端末からしか使えないシステムがある場合、フリーアドレス化の前提条件が整っていない可能性があります。書類のやり取りが紙中心である、業務端末がノートPCではなくデスクトップである、社内システムがクラウド化されていない——こうしたITインフラの状態は、フリーアドレスそのものの問題ではなく、その手前のデジタル化の課題として切り分けて考える必要があります。
紙文化が根強い場合、無理にフリーアドレス化を進める必要はありません。固定席のまま、他の改善策を検討するのも一つの選択です。
(関連する記事はこちら▶ ABWとは?フリーアドレスとの違い )

4. メリットを引き出す「3つの見直しポイント」

ここまでの課題を踏まえ、フリーアドレスのメリットを引き出すための見直しポイントを、空間・運用・組織という3つの設計軸でご紹介します。
4-1. 空間設計——「選べる環境」をゾーニングでつくる
集中・コラボ・休息など、目的別にエリアを分けることで、従業員が迷わず「今の自分に合った場所」を選べるようになります。スペースを設けるだけでなく、各エリアの使い方をきちんと浸透させることが、機能させるための鍵になります。
正解となるゾーン数があるわけではなく、組織の特性や業務の性質に合わせて設計することが重要です。
(関連する記事はこちら▶ フォンブース導入のポイント ▶ オフィスレイアウトの考え方)
4-2. 運用設計——ルールと定期見直しの仕組み
座席予約システムは有効な選択肢ですが、システムを導入するだけでは機能しません。使い方の案内、ルールの整備、利用状況の定期的な確認をセットで進める必要があります。
オフィスは完成がゴールではなく、実際の使われ方に合わせて継続的に手を入れていくものと捉えることが重要です。「使われていない集中ブースをフォンブースに変える」など、PDCAを回す姿勢が、長期的な投資対効果につながります。
(関連する記事はこちら▶ ファシリティマネジメントとは)
4-3. 組織設計——チーム特性・在籍年数に合わせた柔軟性
完全フリーアドレス、グループアドレス、固定席の混在など、組織の実態に合わせたハイブリッド型が現実的な選択肢になることもあります。若手層には、部署やチームごとにエリアを決めて席を選ぶグループアドレスも、有効な選択肢のひとつです。
「全員同じルール」を目指すのではなく、「誰のためのオフィスか」を問い直すことが、設計の出発点になります。
まとめ
冒頭でも触れた通り、フリーアドレスがうまくいかない背景にはさまざまな要因が考えられますが、空間・運用・組織という見直しポイントを押さえることで、メリットを引き出せる可能性は十分にあります。フリーアドレスの悩みも、オフィス空間全体の悩みも、GOOD PLACEにお気軽にご相談ください。
- フリーアドレスのメリットを活かすために最初にすべきことは?
- 導入目的の明確化と、その目的を全社で共有することです。目的が曖昧なまま座席だけを自由にすると、「なぜ自由席にしたのか」が伝わらず、いつもの席に固定化してしまうケースが少なくありません。現在の出社率・在席率を把握したうえで、空間・運用・組織の3つの視点でルール設計とセットで検討することが、フリーアドレスのメリットを引き出す出発点になります。
- フリーアドレスで社員が集中できない場合、何が原因ですか?
- 原因は1つではなく、席の環境と会話・音の両面が関係しています。GOOD PLACEの調査(2025年12月、n=441)では、座席運用の不満で「静かに作業できる席が足りない」29.7%と「会話や通話が多くて集中しづらい」24.9%が上位に挙がりました。また、集中ブースを設置しているオフィスは49.2%あるうち、利用したことがある人は32.5%にとどまり、保有と利用の間にはギャップがあります。個室型のブースだけでなく、短時間の通話に使える半個室や、私語を抑えたクワイエットゾーンなど、集中の目的に合わせて空間の種類を用意することが重要です。
- フリーアドレスは新入社員に向いていますか?グループアドレスとの違いは?
- 新入社員にとって、分からないことをすぐ確認できる相手が近くにいる安心感は、日々の仕事のしやすさにつながります。フリーアドレスでは、この距離感が保ちにくくなりがちです。実際、GOOD PLACEの調査(2025年12月、n=441)でも、在籍3年未満の社員のうち、「近くにいてほしい」(28.8%)と「同じエリア内にいてほしい」(40.0%)を合わせて68.8%が、上司との近い距離感を求めているという結果も出ています。対策としては、部署単位で座席エリアを固定し、そのエリア内で自由に席を選ぶ「グループアドレス」の導入も有効です。
- 座席予約システムは必ず導入すべきですか?
- 必須ではありませんが、導入効果は高い傾向にあります。GOOD PLACEの調査(2025年12月、n=441)では、座席予約システムを導入している職場の満足度は77.2%で、ルールのない自由選択型の57.1%を20ポイント上回りました。出社状況を可視化し、選択を支援する仕組みが鍵になります。
- フリーアドレスが向かない部署・職種はありますか?
- 主に3つが挙げられます。①経理・法務・人事など機密情報を扱う部署、②専用機材や大型モニターを使う開発・デザイン職、③固定電話対応が多い職種です。これらの部署は固定席を維持したほうが業務を進めやすいケースがあり、該当部署だけ固定席を残す部分導入も選択肢のひとつです。
- 導入済みのフリーアドレスがうまくいっていない場合、何から見直せばいいですか?
- まずは従業員アンケートによる不満の特定と、実際の座席利用率の測定から始めることをおすすめします。空間・運用・組織という3つの軸で、部分的な軌道修正を重ねていくことが重要です。経済産業省「健康経営オフィスレポート」(平成27年度)でも、オフィス環境が従業員の活力向上やパフォーマンスの発揮に影響するという考え方が示されています。自社での実態調査から相談したい場合は、GOOD PLACEにお気軽にご相談ください。


