フリーアドレスとは?メリット・デメリットと導入のポイントも解説
フリーアドレスを導入すると、社員同士のコミュニケーションが活発になるなど、さまざまなメリットがあります。一方で、誰がどこにいるのかわからなくなるなどのデメリットもあるため、フリーアドレスを導入する際は、自社の状況をしっかりと把握した上で、導入目的を明確化することが大切です。
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目次
1.フリーアドレスは社員が自由に席を選んで働けるワークスタイル
フリーアドレスとは、社内で社員の固定席が決まっておらず、自由に席を選んで働けるワークスタイルのことです。フリーアドレスには主に、部署を問わず社員が自由に席を選べる「完全フリーアドレス」と、部署や組織のエリアが固定されていて、その中で自由に席を選べる「グループフリーアドレス」の2種類があります。
フリーアドレスに意味が近い言葉に、「ABW」があります。ABWとはActivity Based Workingの頭文字を取った言葉で、ワークプレイスの場所、広さ、時間を仕事内容に合わせて選ぶ働き方のことです。
フリーアドレスは、オフィス内のどの席で働くかを選べるワークスタイルを指し、選択の範囲がオフィス内に限定されている点がABWと異なります。
近年、フリーアドレスを導入する企業は増えています。日経BP総合研究所イノベーションICTラボが2024年4月に行った「ワークスタイルに関する動向・意識調査」によると、「フリーアドレスを導入している」「フリーアドレスを利用でき、それとは別に固定席もある」という人は、2023年10月の前回調査から増加し、初めて50%を上回りました。
フリーアドレスが広がっている背景には、ICTの進化やコロナ禍によってテレワークが増えたことなどが関係していると考えられています。
参考:株式会社日経BP「フリーアドレス導入率が初の5割超え、出社とテレワークの「理想の割合」に変化」(2024年6月)
ABWについて詳しく知りたい方は、こちらのコラムをご覧ください。
ABWとは?フリーアドレスとの違いやメリット・デメリットをご紹介
2.フリーアドレスのメリット
フリーアドレスを導入することには、複数のメリットがあります。主なメリットは下記のとおりです。
2-1.コミュニケーションが活発になる
フリーアドレスを導入すると、普段は関わる機会が少ない社員同士のコミュニケーションが活発になることが期待できます。
フリーアドレスでは、社員の席が固定されていないため、普段からよく関わる上司や部下、同じプロジェクトに取り組むメンバー以外の社員が隣の席に座ることがあります。このような偶然は、新たなコミュニケーションを生み出すだけでなく、課題解決のアイディアを得るきっかけになるかもしれません。
2-2.スペースを有効活用できる
オフィスのスペースを有効活用できることも、フリーアドレスを導入するメリットです。営業など外出の機会が多い社員がいる企業では、固定席があっても不在であることが多く、スペースが無駄になってしまうケースがあります。フリーアドレスを導入すれば固定席がなくなり、そうしたスペースを有効活用できます。
また、組織変更などがあった際も、フリーアドレスであれば、オフィスレイアウトを変更する必要はありません。
2-3.生産性向上を期待できる
フリーアドレスを導入すると、生産性の向上も期待できます。自分の席が固定されていなければ、仕事に集中したい日は周囲に人が少ない席を選び、コミュニケーションをとりたい日は人が多くいるエリアの席を選ぶといった選択ができます。業務内容や気分によって席を選べると業務意欲が高まり、生産性の向上にもつながるでしょう。
また、フリーアドレスでは固定席がないため、社員が席に私物を置いたままにすることは、基本的にありません。これにより、オフィス全体のクリーンデスクが推進され、生産性のアップにつながることも期待できます。
3.フリーアドレスのデメリット
フリーアドレスには、メリットだけでなくデメリットも複数あります。主なデメリットは下記のとおりです。
3-1. 誰がどこにいるかわからない
フリーアドレスでは、誰がどの席にいるかが基本的にわかりません。
上司の立場にある人は、部下の出社状況や勤務態度が把握しづらくなる可能性があります。顔を合わせる機会が減ることで、コミュニケーション不足になりやすいデメリットもあります。
3-2.導入には一定のコストが必要
フリーアドレスを導入するには、一定のコストが必要です。フリーアドレスを問題なく機能させるには、オフィスレイアウトの変更、社員が荷物を入れるキャビネットの設置などを行わなくてはなりません。
また、デスクトップパソコンや固定電話を使用している場合は、ノートパソコンや携帯電話を導入したり、ネットワークを無線化したりする必要もあります。
3-3.集中力が落ちることもある
フリーアドレスを導入すると、前述のように生産性向上を期待できますが、場合によっては集中力が落ち、生産性の低下を招くことがあります。
フリーアドレスには、いつ、どの席に座っても良い自由がある反面、自分のワークスペースが決まっていないことで不安になったり、「会社の一員である」という意識が薄くなったりする可能性もあります。このことが、人によってはストレスに感じられ、集中力の低下につながるケースがあるかもしれません。
4.フリーアドレスが向いている企業
フリーアドレスの導入が向いているのは、主に下記のような企業となります。フリーアドレスを検討している企業は、自社の状況が該当するか確認してみてはいかがでしょうか。
4-1.社内のコミュニケーションを活発化したい企業
フリーアドレスが向いている企業のひとつは、部署を越えたコミュニケーションを増やしたい企業です。
フリーアドレスを全社的に導入すると、普段は関わることがない社員同士や、部署の異なる社員同士が隣に座るケースが生まれます。これにより、社内のコミュニケーションが自然と活発になっていくでしょう。
4-2.ペーパーレス化ができている企業
ペーパーレス化ができている企業も、フリーアドレスの導入が向いています。フリーアドレスを導入すると、社員の固定席がなくなり、紙の書類を自席でなく別の保管場所で保管しなくてはなりません。
社員一人ひとりが紙の書類を多く扱う企業では、フリーアドレスになると、必要に応じて書類を保管場所に取りに行かなくてはならなくなり、業務効率が悪くなってしまいます。ペーパーレス化ができていれば、そうしたデメリットはありません。
4-3.日中は外出している社員が多い企業
日中は外出している社員が多い企業も、フリーアドレスの導入が向いています。
オフィスが固定席になっている場合、社員が外出することが多いと誰もいない空間が増えてしまい、効率的とはいえません。
フリーアドレスは、基本的に全社員分の席を用意する必要がないため、外出率に応じて席数を調節可能です。営業など、日中は外出する社員が多い企業は、フリーアドレスが向いているといえます。
5.フリーアドレス導入の流れ
フリーアドレスは、一般的に下記の流れで導入していきます。フリーアドレスを導入する際の参考にしてください。
5-1.導入目的を明確にする
フリーアドレスを導入する際には、最初に導入目的の明確化を行います。
前述のとおり、フリーアドレスにはメリットもデメリットもあります。「多くの企業で導入されているから」といった理由で、特に目的もなくフリーアドレスを導入してしまうと、状況によってはメリットが感じにくいかもしれません。
「部署間のコミュニケーションを活発化する」「オフィスのスペースを有効活用する」といった目的を定めておくことが大切です。
5-2.フリーアドレスの対象範囲を決める
フリーアドレスを導入する目的を定めたら、次はフリーアドレスの対象範囲を決めます。
例えば、顧客を訪問する営業部や技術部はフリーアドレスを導入し、経理部は固定席にするなど、部署の目的とワークスタイルに応じてフリーアドレスの対象を検討してください。フリーアドレスにすることでメリットがあるかどうかが、対象範囲を決めるポイントです。
5-3.席数を決める
フリーアドレスの対象範囲の次は、席数を決めます。フリーアドレス化する席数は、対象部署の社員数と同じではありません。日中にオフィスで仕事をする社員がどれくらいいるかによって異なるため、対象部署の状況を調査して必要な席数を決めてください。
例えば、フリーアドレス化の対象部署の社員が50人で、その中の営業部10人が日中はほぼ外出している場合、40人分の席に加えて予備席を5席確保し、計45席をフリーアドレス化すれば問題なく稼働するでしょう。
5-4.運用ルールを決める
席数を決めたら、次は運用ルールを決めます。フリーアドレスの運用ルールの例は、主に下記のとおりです。
<フリーアドレスの運用ルールの例>
・退勤や長時間の離席の際は、席に荷物を残さない
・通話や飲食できるエリアを定める
・5日以上同じ席を使用しない
ルールは、フリーアドレス導入前に、社員に必ず共有してください。ルールが共有されないまま導入してしまうと、社員はフリーアドレスを十分に利用できず、導入目的が達成できません。
また、ルールは導入後、社員の反応に応じて適宜変更することをおすすめします。
5-5.各種ツールをそろえる
フリーアドレスを導入するには、ツールの導入が不可欠です。フリーアドレスでは、固定席のような一人用のデスクではなく、複数の社員が並んで座れる大型のデスクが向いています。また、パソコンはデスクトップでなく、持ち運びがしやすいノートパソコンが必要です。
そのほか、書類保管用のキャビネットや私物を入れるロッカーなども、必要に応じて適宜用意してください。
5-6.テストを経て本格導入する
フリーアドレスを導入する際は、テスト運用をしてから本格導入することをおすすめします。
フリーアドレスの目的を定め、準備をしても、導入してみたら思うような成果が出ないこともあるかもしれません。そうした事態にならないよう、特定の部署でテストを行い、成果と課題を確認して、適宜ブラッシュアップしてから本格導入するようにしてください。
6.フリーアドレス導入を成功に導くポイント
フリーアドレス導入を成功させるには、いくつかのポイントを押さえる必要があります。主なポイントは下記のとおりです。
6-1.導入目的を常に意識する
フリーアドレス導入を成功させるには、導入目的を常に意識する必要があります。
フリーアドレスそのものは、目的ではなく手段です。目的を定めたら、準備段階から導入後まで常に意識し、フリーアドレス自体が目的化しないようにしてください。
6-2.フリーアドレスを支える環境を作る
フリーアドレスを支える環境を作ることも、フリーアドレス導入を成功に導くポイントです。フリーアドレスが成果を出すには、自由に選べる席のほかに、アイディアを出し合う「共創」や、一人用の「集中」のスペースが必要です。
また、フリーアドレスの成果や課題を社員から集める仕組みや、ブラッシュアップしていく体制も不可欠でしょう。フリーアドレスが十分に機能するよう、環境づくりにも力を注いでください。
6-3.ICTを推進する
フリーアドレスの導入を成功させるには、ICTを推進することも大切です。フリーアドレスを導入しても、紙書類を多く使っていたり、インターネットがつながりにくいエリアがあったりすると、フリーアドレスが十分に機能しません。
社内のICTを推進し、誰がどの席で業務をしても問題なく仕事が進むようにしてください。
7.フリーアドレスを導入して、生産性を高めよう
フリーアドレスを導入すると、社員は自由に席を選んで働くことができます。普段は関わることが少ない社員同士のコミュニケーションが活発化するといったメリットがありますが、誰がどこにいるかがわからなくなるなどのデメリットもあります。
導入を検討する際は、自社がフリーアドレスに向いているかどうかを確認することが大切です。
フリーアドレスの導入を成功させるには、導入する目的を明確にし、準備段階から導入後まで意識し続け、適宜ブラッシュアップしていくことが必要です。また、フリーアドレスを維持できる環境や、ICTの推進なども欠かせません。
これらのポイントを押さえてフリーアドレス導入を成功に導き、会社の生産性向上につなげてください。
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