オフィス移転の流れと必要業務を解説!成功のポイントも紹介
オフィス移転は、目的を明確化し、計画を立てて適切に実行することで、生産性向上や社員のロイヤリティ向上といった経営課題の解決につなげることができます。しかし、オフィス移転に関わる業務は多く、いつ・何を行えばいいかわからない方もいるかもしれません。
本記事では、オフィス移転の主なプロセスと、オフィス移転をする際の重要業務、オフィス移転を成功させるポイントなどについて解説します。
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目次
1.オフィス移転とは経営課題を解決する手段のひとつ
オフィス移転とは、会社の引越しをして、働く環境を変えることをいいます。働く環境を変えると複数のメリットが得られ、経営課題の解決にもつなげることが可能です。
なお、オフィス移転には、ビルを移る大規模な引越しだけでなく、現在利用しているビル内で別区画を借りて床面積を広げる増床、反対に区画を減らして床面積を少なくする減床なども含まれます。
また、働く環境を変える手段は、オフィス移転だけではありません。レイアウトや内装を変更するリニューアルでも、働く環境を変えることは可能です。経営課題とリソースに応じて、柔軟に検討することをおすすめします。
2.オフィス移転をするメリット
オフィス移転をすることには、複数のメリットがあります。主なメリットは下記のとおりです。
2-1.社内コミュニケーションが活性化する
オフィス移転をすると、社内コミュニケーションの活性化を見込めます。
例えば、オフィス移転を機にリフレッシュスペースを導入すれば、業務では直接関わりがない社員同士でも顔を合わせる機会が増え、新しいコミュニケーションが生まれるかもしれません。
また、フリーアドレスを導入すると、出社するたびに隣り合う社員が変わるため、新しいコミュニケーションが生まれやすくなるでしょう。
2-2.ブランドイメージが高まる
自社のブランドイメージが高まる可能性があることも、オフィス移転をするメリットです。
オフィス移転を行うと、ロケーションや内装デザインなどを、従来のオフィスよりも優れたものにすることができます。これにより、オフィスを訪れた取引先や、新しいオフィスの様子を掲載したウェブサイトの訪問者からの好感度がアップするかもしれません。
企業イメージの向上だけでなく、採用活動にも寄与する可能性があります。
2-3.仕事への意欲が高まる
オフィス移転をしたら、社員の仕事への意欲向上も期待できます。
一般社団法人日本オフィス家具協会が2017年に発表した「オフィスワーカーから見た、オフィス環境ニーズのトレンド」に関する報告書では、「オフィス環境の良し悪しは、仕事に対するモチベーションに影響する」に対し「そう思う/ややそう思う」と答えた人は71.4%に達しました。
オフィス環境が仕事への意欲につながると認識しているワーカーは少なくありません。オフィス移転によって働く環境を適切に改善することで、社員の仕事への意欲を高めることも期待できるでしょう。
参考:一般社団法人日本オフィス家具協会「オフィスワーカーから見た、オフィス環境ニーズのトレンド」
3.オフィス移転に必要な期間は、一般的に約10ヵ月
オフィス移転に必要な期間は、一般的には10ヵ月程度です。長いと、1年から2年程度かかるケースもあります。
10ヵ月前から移転当日までの主な業務は、下記のとおりです。なお、これは一般的な傾向であるため、あくまでオフィス移転を検討する際の参考にしてください。
■オフィス移転に関わる主な業務
オフィス移転までの時間 | 主な業務 |
10ヵ月~6ヵ月前 | ・移転目的の明確化 ・新オフィスの選定 ・旧オフィスの解約予告 |
5ヵ月前 | ・原状回復工事の見積もり依頼 |
4ヵ月前 | ・新オフィスのゾーニング・レイアウトの検討 ・引越し業者の選定 ・新オフィスの設備確認(電気・空調・電話・LANなど) |
3ヵ月前 | ・新オフィスのゾーニング・レイアウト ・オフィス家具の選定・発注 |
2ヵ月前 | ・移転挨拶状の作成 ・新電話番号の決定 ・新オフィスのマニュアル作成 |
1ヵ月前 | ・役所・取引先への移転の連絡 ・原状回復工事の発注 ・内装工事の実施 ・社内説明 ・引越しの準備 |
当日 | ・引越しの実行 ・電話移設工事の実施 |
移転後 | ・原状回復工事の実施 ・旧オフィスの鍵返却 |
4.旧オフィスの退去に伴う重要業務
オフィス移転に関わる業務のうち、旧オフィスの退去に伴う重要業務は下記の2つです。オフィス移転を行う際の参考にしてください。
4-1.解約予告
旧オフィスの退去が決まったら、ビルの管理会社に解約予告をする必要があります。解約予告を行うタイミングは、入居時に交わした賃貸契約書を確認してください。一般的には、退去の6ヵ月前に行います。
解約予告を行わなかったり、賃貸契約書の期日の後に解約予告をしたりすると、解約手数料が発生することがあるため注意しましょう。
また、解約予告は基本的に取り消しができないため、新オフィスを決めてから行ってください。
4-2.原状回復
原状回復は、旧オフィスを入居前の状態に戻すことで、旧オフィスを退去する際に必ず行う重要業務です。
退去後いつまでに原状回復を行うかは、賃貸契約書で確認してください。原状回復工事に必要な期間の目安は、100㎡だと1~2週間程度、300㎡を超えると1ヵ月程度です。
5.新オフィスの入居に伴う重要業務6項目
オフィス移転に関わる業務のうち、新オフィスの入居に伴う重要業務は、主に下記の6つです。オフィス移転を行う際の参考にしてください。
5-1.新オフィスの選定
新オフィスの選定は、オフィス移転の成否を分ける重要業務です。オフィス移転で達成したい目的を念頭に、慎重に検討してください。
新オフィスの選定をする際は、通勤しやすい立地であるか、周辺環境は良好か、各種設備は充実しているかといった要素で比較することをおすすめします。ポイントを絞って選定することで、自社に合ったオフィスを見つけやすくなるからです。
5-2.新オフィスのゾーニング・レイアウト
新オフィスのゾーニング・レイアウトは、移転先のフロアの形状に合わせて実施します。
ゾーニングとは、会議室、執務エリア、リフレッシュルームといったオフィスの各機能を、フロアのどこに配置するかを検討することです。リフレッシュルームは、社員が使いやすいよう執務室の隣に配置するなど、オフィスの使い方にもとづいて検討してください。
レイアウトは、ゾーニングされた各ゾーン内で、オフィス家具や各種機器をどのように配置するかを考えることです。確保したい通路幅や快適性を考慮し、最適な配置となるよう検討しましょう。
5-3.引越し業者の選定
引越し業者は、オフィス移転をスムーズに行うためにも、慎重に検討してください。
引越し業者を選ぶ際のポイントは、予算や対応してもらえる範囲などです。同じ依頼内容でも、引越し業者によって料金が異なる場合があります。
また、オフィス移転を専門としていない引越し業者の場合、オフィスビルへの搬出入や、パソコンなど大量の精密機器の運搬には慣れていないなど、対応範囲が限定されるケースがあります。適切な予算で依頼できる、対応範囲の広い引越し業者を選ぶといいでしょう。
5-4.オフィス家具の選定・発注
オフィス家具の選定・発注は、レイアウトにもとづいて行います。
オフィス家具は、既存のものも活用するよう検討することをおすすめします。クリーニングや生地の張り替えによって再利用できれば、コスト削減や廃棄物削減につなげることも可能です。
次に、新たなオフィスに必要な機能やデザイン、レイアウトなどから新規に購入するオフィス家具を選定します。家具はオフィスのインテリアを左右する重要な要素であるため、デザインコンセプトに合ったものを選ぶことが大切です。海外メーカーの家具は、納期が半年以上かかる場合もあるため、納期が間に合うか確認しましょう。
5-5.新オフィスのマニュアル作成、社内説明
オフィス移転をする際は、新オフィスの利用マニュアルの作成と社内説明が必要です。新オフィスのマニュアルには、主に下記の内容を記載します。マニュアルを読んだ社員が、新オフィスの使い方や新オフィスでの働き方が理解できることが大切です。
<新オフィスのマニュアルの主な記載事項>
・新オフィスのレイアウト
・キャビネットの位置と収納物
・設備・機器の使い方
・会議室やフリーアドレスエリアの利用ルール
・オフィス内の飲食に関するルール
・ビルの利用ルール(入退館の方法、ゴミの分別方法、来訪者の登録方法など)
・宅配便の利用ルール
マニュアルを作成したら、引越しをする前に社内説明会を実施します。タイミングは、引越しの1ヵ月前あたりが目安です。
5-6.引越しの準備・実行
引越しの準備では、当日に向けて移転させる、廃棄物などのリストを個人単位、部署単位で作成します。移転させる物品は、前日までに梱包しておきましょう。
引越し当日は、旧オフィスに忘れ物がないか、新オフィスへの搬入漏れがないかといった確認が必要です。準備で作成したリストを活用し、物品の移転と廃棄が適切に行われたかをチェックしてください。
6.オフィス移転で必要な提出書類
オフィス移転をする際には、関係各所への届け出が必要です。届け出の際に必要な提出書類と、その提出先、提出期限は下記のとおりです。提出書類は、基本的には提出先のウェブサイトなどで入手できます。
■オフィス移転で必要な書類の提出先と提出期限
提出書類 | 提出先 | 提出期限 |
法人税に関する異動届出書 | 税務署 | 移転後1ヵ月以内 |
自動車保管場所証明申請書 | 警察署 | 移転後できるだけ早めに |
適用事業所名称/所在地変更(訂正)届 | 年金事務所 | 移転後5日以内 |
労働保険名称・所在地等変更届 | 労働基準監督署 | 移転後10日以内 |
雇用保険事業主事業所各種変更届 | 公共職業安定所 | 移転後10日以内 |
本店・支店移転登記申請書 | 法務局 | 本店:移転後2週間以内 支店:移転後3週間以内 |
防火対象物使用開始届出書 | 消防署 | 使用開始の7日前まで |
住所変更・転送届 | 郵便局 | 住所変更日・転送開始日まで |
7.オフィス移転を成功させるポイント
オフィス移転を成功させるには、押さえておきたいポイントがあります。主なポイントは下記の4点です。
7-1.移転の目的を明確にする
オフィス移転を成功させるには、移転の目的を明確にすることが大切です。移転によって何を実現したいかが明確でないと、新オフィスを構築する基準が設けられず、ゾーニングやレイアウトもできません。
移転目的とは、「環境を新しくして社内コミュニケーションを活性化したい」「生産性を高めたい」など、オフィス移転によって達成したい目標を指します。移転目的を明確に設定することで、移転に関わるさまざまな業務の検討や判断がしやすくなるでしょう。
7-2.スケジュールには余裕を持たせる
オフィス移転は、スケジュールに余裕を持って取り組むと、予期せぬトラブルへの対応や納得感の高いプランニングがしやすくなります。
オフィス移転は10ヵ月程前から準備を進める必要があり、その過程で発生する業務も少なくありません。スケジュールに余裕がないと、重要業務にじっくり取り組むことができず、移転の満足感が下がる可能性があります。余裕を持ったスケジュールで進めることをおすすめします。
7-3.オフィス移転のプロジェクトチームを作る
オフィス移転は多くの業務が発生するため、プロジェクトチームを作って進めてください。
プロジェクトチームがあれば作業漏れを防ぐことができ、不明点がある社員は担当者に確認できます。進捗確認も確実に行えて、計画全体を滞りなく進められるでしょう。
なお、プロジェクトチームは、総務などの管理部門だけでなく、さまざまな部署からメンバーを集めることがポイントです。管理部門以外のメンバーが入ることにより、多様な視点を盛り込めるだけでなく、オフィス移転に全社一丸で取り組む意識が生まれます。
7-4.オフィス移転のパートナー会社に協力してもらう
オフィス移転を行う際は、オフィス移転を専門とするパートナー会社に協力してもらうのがおすすめです。
オフィス移転の専門会社に依頼すると、プロジェクトチームの負担を減らせるだけでなく、オフィス移転に関するさまざまなアドバイスをもらうことができます。
担当者だけではオフィスに関する最新事情を把握しきれず、ゾーニングやレイアウトも適切にできません。パートナー会社に依頼すれば、そうした点は適切にクリアすることができます。
8.オフィス移転に利用できる補助金
続いては、オフィス移転に利用できる主な補助金を紹介します。補助金制度の内容を確認の上、検討してみてください。
8-1.IT導入補助金
IT導入補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する際に利用できる補助金です。オフィス移転の際、新しくソフトウェアやクラウドサービスなどを導入する予定があれば、補助を受けられる可能性があります。
補助金の申請フローなどの詳細は、「IT導入補助金」のウェブサイトで確認してください。
8-2.事業承継・引継ぎ補助金
事業承継・引継ぎ補助金は、事業承継を目的としたさまざまな取り組みを支援する、中小企業向けの補助金です。事業承継の一環でオフィス移転をする場合、かかる費用に対し補助を受け取れる場合があります。
交付申請受付などの詳細は、「事業承継・引継ぎ補助金」のウェブサイトで確認可能です。
8-3.小規模事業者持続化補助金
小規模事業者持続化補助金は、全国商工会連合会による小規模事業者を対象とした補助金です。補助の対象は、販路開拓や生産性向上に関する取り組みですが、オフィス移転の関連費用を補助するケースもあります。
小規模事業者持続化補助金の情報は、「全国商工会連合会」のウェブサイトから確認することができます。
8-4.ものづくり補助金
ものづくり補助金は、中小企業や小規模事業者向けに設備投資などを支援する補助金です。全国中小企業団体中央会が実施し、オフィス移転を含む、生産性向上に貢献するさまざまな取り組みが支援対象となっています。
公募要領やスケジュールなどの詳細は、「ものづくり補助金総合サイト」に掲載されていますので、申請する際は事前に確認してください。
9.正しい準備と実行で、オフィス移転を成功させよう
オフィス移転をすることで、働く環境を変えることができます。それにより、社内コミュニケーションの活性化やブランドイメージの向上ができれば、経営課題の解決の一助になりえます。
オフィス移転を成功させるには、移転目的を明確にし、スケジュールには余裕を持って取り組むことが重要です。
また、オフィス移転に活用できる補助金もあるため、負担を減らしたい場合はスケジュールなどを確認し、申請してみてはいかがでしょうか。正しい準備と実行が、オフィス移転成功のカギをにぎります。
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