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【インタビュー付】株式会社リクルート 九段下オフィス

PROJECT STORYプロジェクトストーリー

九段坂サステナブルプロジェクトが提言するNEWオフィススタンダード 4

次の「働き方」を実現する4つの施策 ~④「ストレス解消と健康促進」

 

株式会社リクルート 総務・働き方変革総務統括室ワークプレイス統括部の西田華乃氏   写真:SHUNICHI ODA

 

――「ストレス解消と健康促進」とはどのような施策でしょうか。

西田 在宅ワークが続いて多くの方が気づいたのが、出社という行為そのものがかなりの運動になっていることではないでしょうか。リクルートはかなり早くから働き方改革を推進していて、2015年にはサテライトオフィスの利用を開始するといった施策を実施しています。そうした経緯から、コロナ禍になって、一斉にリモートワークを導入するというのも非常にスムーズにいったんですね。それは良かったのですが、毎日家で仕事をしていると全然運動しないので、不健康な生活に陥ってしまうという弊害が生まれてしまったんです。

 

――確かに、コロナ禍の巣ごもり生活で、体重が増えたり、少し動いただけで息が切れたり、疲れやすくなったりします。駅まで歩く、駅の階段を上がる、電車に揺られる、というだけでも運動になっていたんだなと実感した人は多いかと思います。

西田 万歩計を見ると1日に80歩しか歩いていないとかですね。食事も偏りますし。出社ということ自体が運動になるのであれば、会社に出てきたついでに、さらに健康になってもらおう、と考えました。

 

――ランニングステーションはその最たる基地ですね。ただ走らなくても、このオフィスはミーティングルームも執務スペースもいろんなところにあって、ちょっとずつ歩いて移動するような仕掛けになっているので、それだけでも全然違う気がします。鉄扉で閉じられた内階段ではなく、ビルの中にもピロティにも開放的な階段がありますし、2階分ぐらいの移動だったらエレベーターに乗るより早いから階段使いますよね。

西田 移動することが苦にならないというのがポイントですね。ずっと固定席に座っていると血流が悪くなって筋肉も凝り固まるので、時々立って歩いた方がいいんです。階段の上り下りは適度に筋肉を動かすのにちょうどいいんですよ。それに、椅子を変えるというだけでも健康にいい。このビルには立ち姿勢に近い形で壁に少し腰をかけて仕事ができるスペースもあるのですが、気分転換にもちょうどいい場所です。

 

人が行き来する階段。   写真:YURIKA KONO

 

壁に寄り掛かりながら立ち姿勢でワークができる。  写真:YURIKA KONO

 

――場所を変えて仕事をするというのは、精神的にもいい効果がありそうですね。

西田 オフィスに来ることはそれだけで気分転換になるのですが、長時間同じ席に座っているよりも、さらに場所を変えて、見える景色が変わることも、ストレスが軽減されると思います。特にこのビルは大きな窓からの景色がすごくいい。自然の緑の借景があるんですね。それに高層ビルと違って手動で窓が開きますので、風が通るんですよ。常に自然に空気が入れ替わっているし、気分転換に窓から外の空気を吸ってもいい。テラス席で仕事をすることもできますし、本当にキャンパスライフみたいですよね。

 

緑の借景がリラックス効果を生む。 写真:KEIKO CHIBA

 

――最新のヘルスケアのテクノロジーも色々と導入されていると聞きました。

西田 まず、各エリアに、CO2と温度湿度のモニタリングシステムを導入しています。空気中のCO2濃度が高くなってくると、人は眠くなり、脳の働きが鈍くなることがわかっています。さらに濃度が上がると、息苦しさや倦怠感、頭痛を起こすこともあるようです。これはCO2モニターを入れてから初めてわかったことですが、密閉された場所で多くの人が長時間黙々と仕事をしたりミーティングをしたりすると、意外と簡単にCO2濃度が上昇するんですよ。「なんか空気が澱んでいるから換気しよう」といった感覚で窓を開けたりしている人もいると思いますが、CO2濃度を見える化すると、換気が必要なタイミングが明確にわかるんです。

 

――コロナ対策にもなりますね。部屋ごとにCO2のセンサーが付いているんですか?

西田 各部屋にCO2のセンサーが付いていますし、全センサーの数字をパソコンやスマートフォンで見ることもできます。ですから会議室を取るときも、ここは今少しCO2濃度が高いからこっちにしよう、とか、ついたらまず窓を開けて換気をしてからミーティングをしようとか、少し時間を置こうとか、考えて行動するようになりますよ。

 

――健康はもちろんですが、能率にも影響するんであれば、企業にとっても個人にとっても非常に重要ですね。

西田 新たに導入した仕組みはもう一つあって、サーカディアンリズム照明というシステムを導入しています。私たちは生まれながらにして24時間周期の体内時計を持っていて、これをサーカディアンリズム、日本語では既日(かいじつ)リズムと言います。例えば私たちの体温は早朝が最も低く、次第に上昇し、夕方が最も高くなります。血圧も朝が低く、夕方が高くなります。このリズムが狂ってしまうと、睡眠のリズムに障害が出て、不眠症、精神疾患、高血圧などの病気も引き起こす原因となると言われています。

 

――怖いですね。どのようにサーカディアンリズムを正常にコントロールできるのですか。

西田 サーカディアンリズムを作っているのは、セロトニンとメラトニンいうホルモンです。セロトニンは日中に活発に活動するのに必要なホルモンで、精神のバランスを取る役割があります。日中、太陽の光を浴びると分泌量が増え、夜になると分泌量が減ります。代わりに夜になると増えるメラトニンは、「睡眠ホルモン」とも呼ばれ、夜眠っている時に出るホルモンです。メラトニンは、夜になり暗くなることで分泌量が増えます。こうしたセロトニンとメラトニンの正常な分泌を促す照明がサーカディアンリズム照明です。朝から日中は白く明るい光、夕方からは黄色く暖かい光、というように、本来の太陽の光の移り変わりに合わせて、光の量や、光の色(色温度)を自動調節するんです。

 

サーカディアンリズム照明の入ったミーティングフロア。外光とほぼ同じ色の照明。 写真:KEIKO CHIBA

 

――日中は明るい光の中で仕事をきちんとして、夕方から夜になったら仕事を終えて、帰ったら眠くなって早く寝るという規則正しい生活をしてほしいというわけですね。

西田 そうですね。適度な運動、緑豊かな自然の風景、きれいな空気、体内のリズム、そして人と人とのコミュニケーションがあり、ストレスがなく健康にいいオフィス。そういうオフィスを目指しました。

 

 

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