株式会社コスモスモアは、2024年1月8日に「株式会社GOOD PLACE」に社名を変更いたしました。 詳細はこちら×

【インタビュー付】株式会社リクルート 九段下オフィス

PROJECT STORYプロジェクトストーリー

九段坂サステナブルプロジェクトが提言するNEWオフィススタンダード 2

次の「働き方」を実現する4つの施策 〜②何も触れずに過ごせるオフィス

 

株式会社リクルート 総務・働き方変革総務統括室ワークプレイス統括部の西田華乃氏   写真:SHUNICHI ODA

 

――「何も触れずに過ごせるオフィス」とはどのようなものでしょうか。

西田氏(以下、敬称略) オフィスにいる間、自分の持ち物以外に触れずに済むように、あらゆるものをできるだけタッチレスにしようという取り組みです。最初に成果を申し上げると、従来のオフィスに比べてタッチの機会をおよそ88%削減することができました。

 

――かなりの成果ですね。新型コロナウイルス対策として取り組まれたのでしょうか。

西田 それよりも前から、リクルートでは少しずつタッチレスには取り組んでいたんです。九段坂サステナブルプロジェクトがスタートした2020年1月の時点では、まだ新型コロナウイルスが最初に中国で流行し始めたぐらいで、日本でもここまで流行するとは誰も思っていなかった時期です。しかし毎年インフルエンザは流行していましたし、過去にSARSやMARSの流行もあり、新種のウイルスによるパンデミックが起こる可能性はずっと指摘されていましたから、タッチレスシステムを導入していくというのは、私たちにとっては自然な考えでした。プロジェクトがスタートしてから新型コロナウイルスが世界で大流行して、その思いが強まったということですね。ただ、新築のビルではなく、築60年のビルにタッチレスシステムをどこまで導入できるかというのはチャレンジングでした。

 

――実際にどこがタッチレスになったのでしょうか。

西田 まず、わかっていただきやすいのはエレベーターです。この九段坂上KSビルには全館合わせて従業員用エレベーターが6基設置されていますが、この全てがタッチレスになっています。

 

後付けで設置されたエレベーターのタッチレススイッチ。   写真:SHUNICHI ODA

 

――エレベーターは新型のものに入れ替えたのでしょうか。

西田 いいえ。新設のタッチレスエレベーターも2基導入しましたが、残りの4基は既存のエレベーターに操作系のシステムを後付けで搭載することで実現しました。当社がタッチレスソリューションのメーカーであるアルプスアルパイン社さんにお願いして開発してもらったものです。

参考:非接触照明スイッチとエレベーター操作盤をリノベーションビルに導入
(https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000023149.html)

 

――他にもタッチレスソリューションはありますか。

西田 照明のスイッチにもタッチレスシステムを導入しています。執務フロアの出入り口は一般的なオフィスと同じでセキュリティゲートを設けているのですが、それらをタッチレスの自動ドアにしました。従来のオフィスのセキュリティゲートはIDカードをかざしてオートロックだけを解除して、鉄の扉を手で開けるというのが多かったです。一方で自動ドアはオートロックがついていないのが常識ですよね。私たちはそれらの常識を疑ってみたんです。それでIDカードをかざして開く自動ドアにしました。

 

――確かに、マンションでは見ますが、オフィスでは見ないですね。そのシステムも新しく開発されたのですか。

西田 これはすでにある技術を導入しただけですね。ただ、ロック解除する読み取りセンサーの取り付け位置と角度にはこだわりました。駅の自動改札と同じ高さと角度になっているんです。色々検討したのですが、普段から使い慣れている駅の自動改札と同じというのがベストだったわけです。
また、外に出る扉など、構造上スライドドアにできない開き戸もあったので、それらのドアには開き戸用の自動扉をつけて、IDカードで出入りできるようにしました。トイレの個室のドア以外は、リクルートのIDを持っていれば、このビルでは基本的にドアノブに触れる必要がありません。トイレの手洗い用の水栓と石鹸はもちろんタッチレスですし、トイレの出入り口にも扉は設けていません。給湯室の水栓もタッチレスになっています。

 

――そういえば、自動販売機の取り出し口のカバーがありませんでした。

西田 あれも簡単なことなのですが、タッチレス施策のひとつです。自動販売機のカバーは何のためにあるのかというと、中に落ち葉や雨や砂とかが入らないためにあるらしいんですね。つまり屋内に設置する自動販売機にはそもそも必要がないものなので、取ってもらいました。ただ、商品を購入するボタンはまだタッチレスにできていないので、自動販売機のメーカーさんにご相談しているところです。

 

自動販売機の取り出し口のカバーを外してタッチレスに。  写真:SHUNICHI ODA

 

――中央棟にキャッシュレスの無人コンビニがありましたが、あれも新しい取り組みですね。どういった仕組みなのでしょうか。

西田 キャッシュレス無人コンビニといえばAmazon GO(Amazon.comが米国で運営する無人店舗)が有名ですよね。自分でバーコードを読み取って支払いをするセルフレジは多くの人が使ったことがあると思いますが、結局、人が多くいればレジ前に並ぶことになるんですね。しかしキャッシュレス無人コンビニはレジすら通す必要がない。ただ欲しいものをカゴに入れてゲートの外に出たら自動で決済ができてしまう。この仕組みを導入したかったんです。
それで色々と情報を集めたところ、ちょうどその頃、コンビニエンスストアのローソン様が実証実験で「ローソンGO」というキャッシュレス無人コンビニをスタートさせた(2022年2月)というプレスリリースを見たんです。そのシステムを開発したのが富士通さんだということだったので、こちらから連絡をとって、導入に向けて話を進めていきました。

 

キャッシュレスの無人コンビニ  写真:YURIKA KONO

 

――レジを通さないで、どのように買い物をしているのでしょうか。

西田 まず、店舗を利用したい人はスマートフォンの専用アプリをインストールして、事前にクレジットカードを登録しておきます。スマートフォンをゲートにかざすとゲートが開いて入店ができます。天井には複数のカメラがついていて、AIが入店した人の動きを追尾しています。それぞれの商品棚には重量計がついていて、商品を取ると棚の位置と軽くなった重量で個数がわかります。お客さんは商品を持ってそのまま出ていってしまって構いません。ユーザーがゲートの外に出ると、決済処理が行われるという仕組みです。こちらも、入店から退店までタッチレスです。

 

無人コンビニに隣接するイートインスペース。  写真:YURIKA KONO

 

――築60年のビルの中心(中央棟)に最新のテクノロジーの店舗があるということが面白いです。

西田 当時できることは全てやったつもりですが、まだアップデートできると思っています。タッチレスソリューションは、感染防止対策だけでなく、会社に来た従業員が最新のテクノロジーを使ってワクワクできるオフィスにしたいという思いも込められています。

 

 

NEXT >> 次の「働き方」を実現する4つの施策〜③地域社会・地球環境との共生

 

MORE WORKSその他の実績