【実践ガイド】サステナブルオフィスで実現する企業価値を高めるオフィス環境とは?

目次
【実践ガイド】サステナブルオフィスで実現する企業価値を高めるオフィス環境とは?
近年、企業活動におけるサステナビリティの重要性が高まっています。ESG投資の拡大や環境規制の強化を背景に、「脱炭素化」や「環境負荷の低減」は、大手企業だけでなく中小企業にとっても避けられない課題となっています。
また、オフィス環境の整備は、サステナビリティの観点だけでなく、健康経営や従業員のウェルビーイング向上にも直結する課題です。
「WELL認証」「CASBEEウェルネスオフィス」といった、ビルやオフィスを健康の観点から評価する認証システムやツールも注目されており、オフィスづくりにおけるサステナブルな取り組みの意義は、いっそう強まっているといえるでしょう。環境配慮と従業員のウェルビーイングの両立は、企業価値の向上にもつながります。
そこで本記事では、オフィスづくりにおけるサステナビリティの意義やメリットについて解説します。具体的な取り組み事例もご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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1. サステナブルとは持続可能な社会を未来に残す活動のこと
サステナブル(Sustainable)とは、「持続可能な」という意味を持つ言葉で、「sustain(持続する)」と「able(可能な)」を組み合わせた概念です。具体的には、国や地域などによる、環境への負担を減らし、持続可能な社会を未来に残していく活動を指します。
企業においては、事業活動を通じた利益創出と社会・地球環境への貢献の両立が求められるなど、サステナブルな取り組みが求められる場面が増えています。CO2の排出削減、資源の効率的な利用、廃棄物のリサイクル促進などは、その一例です。
1-1. サステナブルな企業活動とESG経営の関係
企業がサステナブルな取り組みを推進することは、「ESG経営」と深く関係しています。ESGとは、「Environment(環境)」「Social(社会)」「Governance(ガバナンス)」の頭文字を取った言葉で、ESG経営はこれらを重視した企業経営のことです。
特に環境の観点では、脱炭素化や再生可能エネルギーの活用、環境に配慮したオフィス設計が重要視されています。
ESG経営をおこなう企業を積極的に評価し、投資の対象とする「ESG投資」も広がっており、多くの企業にとってESG経営を実践することは、資金調達や信頼性向上のために不可欠な取り組みといえるでしょう。
1-2. サステナブルなオフィスづくりとSDGsの関係
企業活動の一つであるオフィスづくりは、SDGsと関係があります。SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」のことで、国際連合が掲げる17の目標からなる世界共通の指標です。
オフィスづくりの観点で、例えば下記のようなSDGsの目標に対応できます。
<オフィスづくりに関係するSDGsの目標>
・目標3「すべての人に健康と福祉を」:快適なオフィス環境を整備し、従業員の健康や働きやすさを向上
・目標12「つくる責任 つかう責任」:サーキュラーエコノミー(循環型経済)を意識した、リサイクル可能なオフィス家具の導入
・目標13「気候変動に具体的な対策を」:省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの活用によるCO2の削減
オフィスのサステナビリティを高めることは、持続可能な世界をつくっていくための重要な取り組みといえるでしょう。
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2. オフィスのサステナビリティが重視されている理由
前述のとおり、オフィスのサステナビリティを高めることは、持続可能な世界をつくっていくための重要な取り組みです。企業にとって、国際的な目標に力を注いでステークホルダーの信頼を獲得し、企業価値を高めることは、ESG投資の観点からも不可欠といえます。
企業価値を向上させるためには、環境への配慮が求められています。2023年4月に施行された改正省エネ法(エネルギーの使用の合理化及び非化石エネルギーへの転換等に関する法律)によって環境規制も強化されており、企業は持続可能な経営を求められています。
従業員の意識も変化し、オフィス環境のサステナビリティは、会社への信頼感や優秀な人材の採用・定着につながる重要な要素となっているのです。
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3. サステナブルなオフィスをつくるメリット
サステナブルなオフィスをつくるメリットは、主に下記の3つがあります。それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1. 従業員の満足度が高まる
サステナブルなオフィスをつくると、従業員の満足度が向上します。例えば、リフレッシュスペースや集中スペースを設置すると、業務内容やワークスタイルに応じてそれらを使い分けられるようになり、快適性や働きやすさが高まります。
オフィスに自然光が入るようにレイアウトしたり、空調を適切に管理したりすることによって、従業員のウェルビーイング(心身の良好な状態)の向上にもつながるでしょう。また、こうしたオフィス環境を求める人材の獲得にもつながります。
3-2. 中長期的にコストを削減できる
中長期的にコストを削減できることも、サステナブルなオフィスをつくるメリットです。LED照明を導入すれば消費電力を抑えられ、電気代を削減できます。オフィスのペーパーレス化を推進することで、印刷コストや紙の消費量を削減し、業務効率も向上するでしょう。
また、リサイクルやリユースを促進することによって、オフィス家具や什器の再利用が広がり、新規購入のコストを抑えられます。
これらの取り組みは、短期的には導入コストが必要になる場合もありますが、中長期的には運用コストの削減が期待できます。
3-3. 企業ブランドが向上する
社外のステークホルダーからの評価が高まり、企業ブランドが向上することも、サステナブルなオフィスづくりの大きなメリットです。
サステナブルなオフィスをつくり、ウェブサイトなどを通じて社外に情報発信すると、取引先や求職者といったステークホルダーの評価向上につながります。企業ブランドが向上すれば、新規のビジネス機会の創出や、採用活動にも好影響を与えてくれるでしょう。
また、近年は企業のESG経営が、投資家の投資判断を左右する重要な要素となっています。サステナブルなオフィスづくりは、資金調達の面でもプラスに働く可能性があります。
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4.オフィスでできるサステナブルな取り組み
サステナブルな取り組みは、オフィスのあらゆる場面で実践できます。具体的に取り組みやすい施策をご紹介します。
4-1.ペーパーレスを推進する
オフィスでできるサステナブルな取り組みの一つは、ペーパーレスの推進です。オフィスでの紙の使用を減らすことで、環境負荷の低減と業務の効率化を図ることができます。
具体的には、下記の方法が効果的です。
<ペーパーレスを推進する方法>
・デジタルツールの活用促進(電子契約やペーパーレス会議など)
・印刷ルールの設定(両面印刷やモノクロ印刷を基本とするなど)
・社内文書の電子化(社内資料のデータ管理など)
これらを推進することにより、コスト削減だけでなく、業務のスピードアップにもつながるでしょう。
4-2.LED照明を導入する
LED照明の導入も、オフィスでできるサステナブルな取り組みです。LED照明は従来の蛍光灯に比べて消費電力が小さく、オフィスの照明をLEDに切り替えると電気代が削減でき、環境負荷の低減にもつながります。
また、一般照明用の蛍光灯の製造・輸出入は、2027年までに廃止される見込みであり、これに対応するためにも、オフィスの照明はLEDに切り替えるのがおすすめです。
4-3.空調の温度設定を最適化する
空調の温度設定を最適化すると、オフィスのサステナビリティを推進できます。オフィスの設備・機器の中でも、空調は特に使用電力量が大きいため、温度設定を見直すことで、省エネと快適な職場環境の両立が可能になります。
空調の温度設定は、冬季なら20℃前後、夏季であれば26~28℃が目安です。資源エネルギー庁の「夏季の省エネ・節電メニュー」によると、夏季のオフィスビルでは、温度設定を26℃から28℃に上げると、建物全体で4.1%の節電効果が得られるとされています。冷やしすぎを控えるためにも、温度設定は高めにすることをおすすめします。
会議室や休憩室の空調は、部屋を使わない間は停止にしましょう。空調のフィルターをこまめに清掃したり、ブラインドや遮光フィルムなどで日射を遮ったりすると、省エネ効果を推進できます。
ほかには、電力を最も使う時間帯の電力購入量を減らし、太陽光発電などでつくった電気を使用するピークカット機能を使うと、環境負荷低減を推進するうえで効果的です。また、水の気化熱を利用するガス吸収式冷温水機を使用することでも省エネにつながります。
参考:資源エネルギー庁「夏季の省エネ・節電メニュー」(2023年6月)
4-4.働きやすいオフィス環境をつくる
働きやすいオフィス環境をつくることも、サステナブルな取り組みの一つです。例えば、フリーアドレスを導入することで、オフィスの柔軟性が高まり、従業員の働きやすさ向上につながります。オフィススペースの有効利用にもつながり、コスト削減効果も期待できるでしょう。
そのほか、コミュニケーションを促進するためのスペースやリフレッシュのためのカフェスペースを設置することも、従業員の生産性向上につながる要素です。観葉植物、壁面緑化などもオフィスの快適さにつながるため、サステナブルなオフィスをつくる際におすすめです。
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5.オフィス移転・リニューアルを通じてできるサステナブルな取り組み
サステナブルな取り組みは、オフィス移転・リニューアルなどの際にも実行できます。おすすめの取り組みを3つご紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
5-1.環境に優しい素材のオフィス家具にする
オフィスの移転・改装などで新たなオフィス家具を導入する際は、環境負荷の少ない素材を使用した家具を選ぶことをおすすめします。リサイクル素材、森林整備で発生した未活用材などは、新たに環境への負担が発生することがありません。
また、キャビネットやパーティションといった什器類は、できるだけリユースをして、廃棄物の削減につなげましょう。
5-2.オフィスのCO2排出削減を目指す
オフィスの移転・改装を機に、CO2排出の削減を目指すことも大切です。省エネ性能の高い空調設備や照明の導入、商品・サービスのライフサイクル全体で排出される温室効果ガスを表示するカーボンフットプリントの採用などにより、CO2の排出を効果的に削減できます。
CO2削減を意識したオフィスづくりは、環境規制への対応だけでなく、企業のサステナビリティ向上にも寄与します。
なお、当社では建築工事で発生するCO2排出量を算出するサービス「Carbon watch(カーボンウォッチ)」を提供しています。オフィス移転・改装におけるCO2排出の削減を考えている方は、ぜひご検討ください。
詳しい記事はこちら▼
14年前から取り組むCO2排出量算出サービスの算出対象を新築・リノベーション工事へ拡充し、新たに提供開始
5-3. 将来の解体を見据えた設計をする
オフィスの移転・内装をおこなう際には、将来的な解体やレイアウト変更を考慮した設計を採用することで、長期的なコスト削減と環境負荷の軽減が可能になります。執務スペースの間仕切りはできるだけ減らすことで、オフィス空間を広く活用できるだけでなく、後でレイアウト変更が必要になった場合にも対応しやすくなります。
レイアウト変更の負担が減れば工事などの工数も少なくなり、結果的に環境負荷の低減につながるでしょう。
また、オフィス家具にはモジュール化された什器を選定し、組み替えながら長期にわたって使用するのも効果的です。
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6.サステナブルなオフィスづくりの事例
続いては、サステナブルなオフィスづくりの事例をご紹介します。オフィスのサステナビリティ向上を検討している方にとって、参考になるポイントが見つかるはずです。
6-1.株式会社リクルート 九段下オフィス
株式会社リクルート様は、都内の7つのオフィスから従業員1,500人を集約・移転する「九段坂サステナブルプロジェクト」を2020年に実施しました。築60年を超すビルの良さを活かしつつ、オフィスをリノベーション。古い建物を壊さずに使い続けることを通じて、SDGsの12番目の目標である「つくる責任 つかう責任」の実現につなげました。
詳しい記事はこちら▼
【インタビュー付】株式会社リクルート 九段下オフィス
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7.サステナブルな取り組みをオフィスから広げていこう
環境負荷の低減などを通じてサステナブルな社会をつくることは、多くの企業にとって中長期的な課題であり、ステークホルダーの信頼を獲得するためにも不可欠な取り組みです。
サステナブルな取り組みは、オフィスづくりや、オフィス内での日々の小さな活動などを通じて実践でき、オフィス移転・内装を機に推進が可能です。地球環境の負荷低減と自社のブランド向上、事業の成長のために、サステナブルな取り組みをオフィスから広げていきましょう。