株式会社コスモスモアは、2024年1月8日に「株式会社GOOD PLACE」に社名を変更いたしました。 詳細はこちら×

【インタビュー付き】関電不動産京都ビル エントランス・外構

外観

ビル建築当時に彫刻家・清水 九兵衞氏が製作したモニュメント

植栽の多い外構は、街のオアシスのような空間に

ファサード

ビルコンセプトを表したサイン

エントランスベンチ

トラバーチンとシンメトリーなデザインが重厚感・安定感を感じさせるエントランス

武⽥ 五一氏のデザイン⼿法を取り⼊れた装飾天井

装飾天井に合わせてセレクトしたシャンデリア

エレベーターホール

外観

夜は暖色系の照明が足元を照らすアプローチ

温故知新のリノベーションが、京都に新たな個性と交流の空間を生む

京都駅から徒歩約3分という好立地にある「関電不動産京都ビル」(旧:新京都センタービル)。築40年を超え、再開発などで周辺の築古ビルが消えゆくなか、オフィスビルとしてのバリューアップとビルブランドを体現するべく、2024年にエントランスと外構を改修しました。

関西電力グループの総合不動産デベロッパーとして、関西を中心に首都圏や国内中核都市、海外で事業を展開する関電不動産開発株式会社様の「築100年まで周辺ビルや新築ビルとも渡り合える建物に再生したい」という思いを受けて、GOOD PLACEがビルの歴史や地域性、ストーリーを大切にしつつ、新たな機能も加える改修を実現。

このプロジェクトが、どのように始まり、実行されたのかを関電不動産開発株式会社 開発事業本部の川上様、大森様にお話しいただきました。

聞き手/株式会社GOOD PLACE 大阪支店 ストラテジックデザイン課 伏見 啓希
執筆/住吉 大助

改修を終えた関電不動産京都ビルの外観 写真:Keiko Chiba(Nacasa & Partners)

京都駅周辺の再開発やコロナ禍をきっかけに、ビル改修へと動き出した

GOOD PLACE 伏見(以下、伏見)
京都駅前にある中央郵便局の再開発やJR京都駅の大改修など、さまざまな再開発が進んでいることから、京都駅周辺は今後10年ほどで大きく様変わりしそうです。関電不動産京都ビルの改修は2024年11月に竣工し、駅周辺の再開発の一歩先を行く形となりましたが、改めて何をきっかけに外構とエントランスを改修することになったのでしょうか。

関電不動産開発株式会社 川上様(以下、川上様)
私は3年ほど前に関電不動産京都ビルの運用担当になりました。エントランス以外の場所は度々改修されていたのですが、エントランスまわりは古いままで大きな改修は行われておらず、そのためエントランスの改修は自分が引き継いだタイミングでいずれやらねばならないことと認識していました。
加えて2021年の年末、すぐ近くにある京都中央郵便局をオフィスやホテルも入る14階建ての高層複合ビルにする計画が新聞などで報じられて。そうした報道を受けて、ビルの入居者様から「中央郵便局の再開発について、何か知っていたら教えてくれませんか」と尋ねられることも増え、バリューアップなど何か手を打たなければ入居者様に退去されてしまうのではないかという危機感が増しました。

関電不動産開発株式会社 開発事業本部 第二事業部 開発グループの川上様。プロジェクト当時は運用グループに在籍 写真:Kiyoshi Nishioka

 

関電不動産京都ビルのエントランスには、改修前から白のトラバーチンというとても質の高い大理石が使われていました。ただ、当時は改修前の照明の色合いも相まってちょっと冷たい印象があり、お迎えするエリアとしては少し寂しい印象を受けていました。当時、弊社内でももう少し周辺ビルとの競争を意識しなければいけないという話になった記憶があります。

関電不動産京都ビルの周辺は、京都タワーなどの観光スポットもありますが、オフィスビルが中心のエリアです。コロナ禍の終わり頃には関電不動産京都ビルにいくつか長期的な空室がでてしまっていたことも背景にありました。

エントランスのBefore/After 青白く冷たい雰囲気から、重厚感・気品がありながらもあたたかい空間へ

 

関電不動産開発株式会社 大森様(以下、大森様)
弊社では、運用物件の入居者様に対し満足度調査を実施しており、関電不動産京都ビルでは「リフレッシュスペースを設けられないか?」や「緑が足りない」といったご意見をいただいていました。そこでエントランスと同時に、タイルや植栽などの外構も整えることで、ビル全体の印象を高められるのではないかと考えました。

関電不動産開発株式会社 開発事業本部 第二事業部 運用グループの大森様 写真:Kiyoshi Nishioka

 

伏見
京都駅周辺の再開発は、周辺のオフィスビルや築古ビルにも大きな影響を与えていますよね。コンペではどのような会社さんへ声をかけていったのでしょうか。

川上様
このプロジェクトでは、過去のコンペにご参加いただいた会社だけでなく、今までお付き合いのない会社にも声をかけようと考えて、いろいろな会社の実績を調べました。関電不動産京都ビルに合いそうなデザインを探すため、「業界トップ」や「おしゃれなオフィス」といったキーワードで検索して、これは!というところに声をかけていきました。

伏見
GOOD PLACEのホームページに掲載している実績もご覧いただいたのでしょうか。

株式会社GOOD PLACE 大阪支店 ストラテジックデザイン課の伏見 啓希 写真:Kiyoshi Nishioka

 

川上様
もちろんです。それに2021年に関電不動産梅田新道ビル(旧:ザイマックス梅田新道ビル)をGOOD PLACEさんに改修していただいたことも覚えていたので、あのデザインも良かったな~と思い出しながらお声がけしました。実際コンペに参加してくださったのは4社でしたね。

伏見
ありがとうございます!コンペでのGOOD PLACEの提案について、審査された皆さんはどのような反応でしたか?

川上様
私が中心になって担当していたこともあり、コンペの前に「こんなエントランスにしたい!」というイメージをパワーポイントのスライドにして、ご参加いただいた各社へRFP(提案依頼書)としてお渡ししていたのですが、その要件の中からいらないところを上手に省いて、良いところを残してご提案してくださったのがGOOD PLACEさんだったなと思っています。

提案書イメージ

 

4社からいただいたご提案をテーブルに並べたとき上司がGOOD PLACEさんの提案書を指して、「川上さんは絶対このデザインが好きでしょ」と言われたくらい(笑)。
自分では削りきれなかった不要な部分をプロの目で上手に消化してくれて、私のやりたいことをちゃんと反映していただいたなと、なにか思いを叶えていただいたような気持ちになりました。結果的に、社内からも「このエントランスのデザインを実現してほしい」という声が多く上がったのはGOOD PLACEさんのご提案で、関電不動産京都ビルの新たな歴史を歩みはじめる改修を発注することになりました。

プロジェクトは、いろいろな素材・空間を共に体感していくことからスタート

川上様
GOOD PLACEさんにお願いすることが決まり、具体的な話を進めていく段階で、関電不動産京都ビルの1階が来店型のテナントさんということもあり、テナントさんの視認性がどうなるかとか、おしゃれなデザインも実際にはパースのように仕上がらないんじゃないか、模型があったらいいな、などいくつか細かな疑問点や要望が浮かんでいました。
それらの要点をまとめてお渡ししたところ、返ってきたのが「いろいろな場所に見にいきませんか」というご回答で、とても驚いた記憶があります。

伏見
正式に発注いただいてから仕様を決めていくなかで、仕上がりイメージを画で見せることはできるけど、安心してもらうには何かが足りないかなと感じていたんです。言葉やパース、図面を超えて伝えられるものはなんだろうと考えた結果、現物を見てもらいたい、一緒に見に行くしかない!となって(笑)。

外構の植栽も実際に見に行き組み合わせを決めていった

 

天井の一部を再現したモックアップや現地の屋外でのレンガ積みモックアップ、植栽を植えるイメージを他のビルを巡ってお見せすることで、「こういうものが出来上がるんだ」と納得いただけるのではないか……と考えました。モックアップを作ることや屋外の完成イメージを街中へ繰り出して見に行くことは初めての試みだったのですが、そこまでやったからこそ皆さんが頭の中に同じイメージをもち、細微にまでこだわることができたと思います。

改修前から壁面や床に使われていたトラバーチンはすべて磨き直して残し、経年による価値を活かした 写真:Keiko Chiba(Nacasa & Partners)

 

川上様
初めてでしたし、忘れもしない、暑いなかわざわざ石を見に行った思い出です(笑)。

大森様
熱中症になりかけながら、でもすごく良い勉強になりました。

伏見
GOOD PLACEは、お客さまにご納得いただけるまで徹底的に取り組むことを特徴のひとつにしています。そして打ち合わせを何度もした結果、「こうすればもっと良くなる」という考えにたどり着けました。皆さんからいろいろなご意見をいただいたからこそ、より良いデザインになったといえます。

川上様
大小さまざまな疑問や不安をお伝えしてよかったです。良いデザインという点では、トラバーチンに加えてエントランスの天井も推したいです!初めて天井のモールを拝見した際は、パースではわからない感動がありましたからね。しかも木材とウレタンを使ってできる限り軽量に仕上げることで、耐震性や安全性も高めていただきました。

エントランスの天井のモール 写真:Keiko Chiba(Nacasa & Partners)

 

伏見
あの精緻で重厚なモールは、隣接する京都関電ビルディングを設計し、「関西建築界の父」と呼ばれる建築家・武田五一氏のデザインからインスピレーションを得ました。武田五一氏は京都帝国大学建築学科を創設した人で、建築家フランク・ロイド・ライトを日本に紹介した人でもあり、調べるほど素晴らしい意匠がどんどん出てくる。京都関電ビルディングのグリッド窓の水平、垂直ラインを意識したデザイン手法にインスピレーションを得ることで、関西建築の歴史の継承や周辺との調和につながっていくのではないかと考えました。
モールの細かい装飾にもこだわりたかったので、原寸大のモックアップ(模型)を制作し、ライトがあたったときの陰影の様子など何度も検証してつくり上げたこだわりの天井です。

モックを制作し照明メーカーさんで検証

 

川上様
大規模な改修となり、私自身初めてなことも多かったので、私も大森も即座に決断するのが難しい項目も多くて。私たちの不安をお伝えし、さまざまな事例を見せていただいたことが、その後の自信につながったと思います。コンペでも「このプロジェクトにかける思い」を一番強く感じましたし、GOOD PLACEさんと一緒に改修できてよかったなと。

伏見
そういってもらえて良かったです。改修後、入居者様の反応はいかがでしょうか。

大森様
今、反応がとても良いのが、エントランスの柱の死角に配置されたフォンブースです。
実はコンペの際、フォンブースをうまく配置してくれる会社があるだろうかと、半信半疑な部分もありました。しかし、エントランスの意匠に溶け込むようご提案くださったGOOD PLACEさんのアンサーが、もう100点満点で。

エントランスの左右に配置されたフォンブース。柱のように見えるデザインで周囲に溶け込んでいる 写真:Keiko Chiba(Nacasa & Partners)

 

伏見
ありがとうございます。大通りに面した南側からエントランスへ入ってきた際、フォンブースの入り口や、待合席などが見えにくくなるよう配置しました。シンメトリーなデザインにより、来訪者には重厚感や安定感を感じさせつつ、入居されているお客さまたちの機能性も担保しています。フォンブースの利用率はいかがでしょうか。

大森様
大変好評で、1日のなかで空いている時間の方が少ないそうです。先日運用会社から稼働状況について報告をいただきましたが、利用状況は上昇傾向で今後認知が広がれば、より高稼働が見込めるとのことでした。入居者様だけでなく、来客される方も使える形で運用しているため、利用率が高いことは確かです。

エントランスにもベンチを設け、休憩スペースを増やしている 写真:Keiko Chiba(Nacasa & Partners)

歴史を継承しながら、新たな機能と価値をプラスした外構改修

伏見
今回の改修では、エントランス部分だけでなくビルの外構も大きく生まれ変わりました。こちらの利用状況はどうですか?

大森様
こちらも今、大変好評です。特に外構に設けたベンチが人気ですね。駅から近いですし、バス通りに面していることもあり、さまざまな方にご利用いただいています。
改修前、オフィスの入居者様からリフレッシュスペースをつくれないかというお声をたびたびいただいており、私たちも休むところがないことを課題として認識していました。そこへGOOD PLACEさんの外構にベンチを置くご提案が刺さりました。
もともと外構のグリーンは一部しかなかったのですが、植栽の面積をぐっと増やしたので、ベンチに座った方が自然光やグリーンを感じられる空間になっています。

ビル入口のBefore/After

 

川上様
外構前の歩道は人通りが多く、テナントさんの目の前なので、どうしても視界が気になるんじゃないかとか、実際に使ってもらえるのかなど、着工前は少し不安だったんです。そこにGOOD PLACEさんがブロックを積む形で透過性もある壁を提案してくださった。この壁の機能や高さも絶妙でした。

伏見
外構に設置した壁は、ベンチに座ったときの目線の高さや壁の高さ、実際の人の動きや動線を考慮してデザインしました。こちらも天井のモールと同じように実際にモックアップをつくり高さや動きを検証しているので、休憩などでベンチを利用される方が心地よく利用できる場所になっていることがわかりとても嬉しいです。

川上様
ビル敷地内にある彫刻家・清水九兵衞氏のモニュメント「CONNECTION」を活かしながら、外構全体をデザインしてくださったことも良かったです。清水九兵衞氏は京都市内を中心にさまざまなパブリックアートを制作されているので、京都のオフィスビルとしてはこの作品があることも一つの象徴になるのかなと思います。

清水九兵衞氏による朱色のモニュメント「CONNECTION」を活かした改修後の外構 写真:Keiko Chiba(Nacasa & Partners)

 

伏見
インパクトありますよね。大きいですし、朱色で目立ちます。
コンペの前に清水九兵衞氏の作品をすべて調べました。調べるほどにデザインの奥深さが見えて、彫刻と建築という違いはありますが、デザインでは共通する部分があるなと。
そして、関電不動産京都ビルが建った1981年から40年以上、このモニュメントも京都の街を見てきているので、これまで市民に愛されてきた時間や重ねてきた歴史を感じます。外構を、自然が体感できる街中のオアシスにすることで、モニュメントのタイトルにもある「つながり」を創出することを目指しました。

大森様
外構に植えられているグリーンには、名前と二次元コードの書かれたネームプレートが添えられていて、二次元コードを読み込むと、植物の特徴などを知ることができます。

外構の利用イメージ 写真:Keiko Chiba(Nacasa & Partners)

 

しかもベンチは、もしもの災害時に「かまど」として使えるBCP対策にもなっている。最近、BCP対策を意識されている入居者様が多いんです。さまざまな意味でつながった(CONNECTION)外構になったのではないでしょうか。
※BCP(Business Continuity Plan)対策:自然災害・大事故の発生時にも事業を継続できるように準備、計画すること

「外構のベンチは多くの方に使っていただいています」と話す川上様と大森様 写真:Kiyoshi Nishioka

 

川上様
改修中、仮囲いでどうしても1階に入居しているテナントさんが見えにくくなってしまうことから、来客に支障がないか親身になって考えてくださったことも嬉しかったです。私たちもテナントさんとは積極的にコミュニケーションをとっていましたが、GOOD PLACEさんからもいろいろ掛け合ってくださって、不安要素を解決しつつ、一緒に良い方向へ行けるよう迅速に動いていただきました。

伏見
テナント様が稼働しながらの外構改修だったので、改修でビル全体の価値を上げるはずがご迷惑をおかけしては意味がない、というのが私たちの考えでした。なので、仮囲いがされていても営業に支障が出ないよう誘導のサインなどをつくるなど、課題があればすぐ対応するようにしていました。

改修を機にビル名称を「関電不動産京都ビル」へ、さらなるバリューアップを目指す

川上様
今回の改修を機に、「新京都センタービル」から「関電不動産京都ビル」へビル名を変更しました。この名称変更は、弊社が「DELIGHT|ワークスタイルに輝きとよろこびを」をコンセプトにビルブランディングを推進していることにも関係しています。

ビルブランディングでは「Sustainability Creativity Communication」を取り組みテーマとして策定しており、改修を機にビルの名称を変更したのはこの「関電不動産京都ビル」が最初の事例になります。

エントランスに掲げられている関電不動産開発のビルコンセプト「DELIGHT|ワークスタイルに輝きとよろこびを」 写真:Keiko Chiba(Nacasa & Partners)

 

伏見
皆さんが細やかにコミュニケーションをとってくれたことで、DELIGHTをデザインに落とし込むことができました。
私自身、建築の正解はひとつではないと考えています。もし提案をして反応が薄かったら、もっと良くするにはどうするかすぐ考えて、また提案する。これをくり返して、お互いに納得できる形にたどり着くことができたので、とても良い形で終われたなと思います。

川上様
おかげで打ち合わせはいつもフランクに情報交換できていました。専門用語も丁寧に説明してくれて、毎回お互いに理解を深めながら次へ進んでいくので、プロジェクトが始まった頃、上司は毎週の定例が楽しみで仕方がないと話していたくらいです(笑)。あとスケジュール管理もとても正確で助かりました。

インタビュー中の様子  写真:Kiyoshi Nishioka

 

大森様
弊社では、「Sustainability Creativity Communication」という3つの項目に取り組むことで「DELIGHT」の具現化を目指していますが、そのなかでもCreativityとCommunicationはかなり良かったなと感じています。DELIGHTのビルコンセプトと、夜間のライトアップが符合していて。実際、夜間に見ると木々と照明が融合しているような感じがして、本当に美しいです。そこは個人的にすごく気に入っているところです。

ライトアップされた外構 写真:Keiko Chiba(Nacasa & Partners)

 

川上様
京都の夜景でいうと京都タワーが知られていますよね。このビルが地域の方たちや入居者様のランドマークとして、京都タワーに並ぶような名所になるといいなという気持ちがあります。これから木々がさらに生長していくと、また雰囲気も変わってくるので楽しみです。

伏見
木々が育つことで変化し続ける外構は、関電不動産京都ビルがもつ歴史や建物のよさを活かしながら未来につなげていくことを表現しています。これにより、「和風」や「古都」といった「京都らしさ」とはひと味違ったビルの魅力を、GOOD PLACEらしく表現できました。そして関電不動産京都ビルが約40年前に建ち、これからもこの場所に存在し続けることに、とても魅力を感じています。
最後に、改修プロジェクトを実行したなかでのご感想やご意見などを教えていただけますか。

川上様
個人的にはSustainabilityの分野ももう少し頑張りたかったです。改修前に比べて植栽を増やして、それぞれの植物を二次元コードも活用して紹介しているので、外構を利用される方たちが環境のことを考えるきっかけになるんじゃないかなとは思いますが……。予算とのバランス、何をどこまで実現するか、など実際にやってみてSustainabilityの奥深さに気づくことができました。
もちろん、プロジェクトとしては想定以上の仕上がりで、「改修前も良かったけど、改修したらもっといいじゃん!」というかなり前向きな気持ちです。

新たに外構へ設置された関電不動産京都ビルの銘石 写真:Keiko Chiba(Nacasa & Partners)

 

大森様
私は着工直前に川上から担当を引き継いだので、何かワクワクするプロジェクトに参加できることに期待が膨らんでいた覚えがあります。途中からの参加でしたが、今回のインタビューを通じて、コンペのためにビルやモニュメントの歴史など細微にわたって深くいろいろなことを調べたうえでご提案いただいたことを改めて実感しました。弊社のビルコンセプトや京都の土地にも合うご提案だったんだなと。
周辺の再開発で築古ビルが淘汰されていくなか、築40年を超えている関電不動産京都ビルが今回の改修を経て、築100年まで渡り合えるようになったのではないでしょうか。私自身、大変勉強になりましたし、今後もぜひ長くお付き合いいただきたいと思っています。

伏見
関電不動産京都ビルの改修プロジェクトは、2024年1月にコスモスモアからGOOD PLACEに社名変更して最初の案件だったこともあり、GOOD PLACEのメンバーも皆かなり気合いが入っていました。
毎週の打ち合わせでくり返し提案して並走しながら、さまざまな方たちが使ってくれる環境をつくる。設計者として、とても貴重で濃厚な時間を過ごさせていただき、ありがとうございました。

また皆さんに喜んでいただける提案ができるよう頑張ってまいります。引き続きよろしくお願いいたします。

左から株式会社GOOD PLACE 伏見、関電不動産開発株式会社 川上様、大森様 写真:Kiyoshi Nishioka

クライアント
関電不動産開発株式会社
ご相談背景
デザインコンペに参加し、事業主の考える関電不動産京都ビルの姿を体現するようなデザインである点を評価いただき受注が決まった。
コンセプト
歴史を未来につなぐ

ビル周辺の再開発などで築古ビルが淘汰されていくなか、今後も継続運用するオフィスビルのバリューアップと事業主のビルブランドを体現する空間が少ないことが課題であった。既存の建物や関わり深い人物の歴史をリスペクトしながら今ある素材空間を最大限に引き出すことで、オフィスビル入居者や来訪者、地域住民などさまざまな人たちが歴史の魅力に触れながら快適に過ごせる場を目指した。
提案内容
築40年の関電不動産京都ビル(旧:新京都センタービル)の長期運用とバリューアップを目的とした、エントランス・外構の改修プロジェクト。

周辺エリアや近隣ビルの調査を行い、地域特性やビルに求められる要素、費用対効果を整理しながらデザインを進めていった。
ビル建設時に彫刻家・清水 九兵衞氏によって製作された敷地内のモニュメントや隣接したビルを設計した「関西近代建築の父」と称される武田 五一氏など、建物にゆかりのある2⼈のデザイン⼿法や思想をデザイン各所に取り入れることで、建物の個性を際⽴たせ競合ビルとの差別化を図っている。
また、今後長い年月使い続けることを考慮し、使用している素材はタイル、レンガ、石など経年劣化が少ないものを選定した。

エントランス
建設当時からエントランスを飾る壁床のトラバーチン(大理石)は新たに磨き上げ、経年による価値を活かしながら重厚感・高級感を継承。天井は、武⽥ 五一氏のデザイン⼿法を取り⼊れた装飾天井を再構築し、トラバーチンに見合う気品あるレトロラグジュアリーな空間を演出している。

外構
ビル利用者や地域の⼈たちが気軽に使える街のオアシスを目指した外構・アプローチエリア。流線的な動線と点在するベンチ、透過性のある壁、中高木などを組み合わせ人の視線の抜けを作ることで、居心地の良い空間を構成。
夜間はライトアップされた植栽の影が外壁に浮かび、都市の中に森(オアシス)が出来上がるイメージを陰影により表現している。
プロジェクト
メンバー
伏見 啓希 / 岩本 和士 / 泉 悠平 / 堀井 敏彦
実施内容
設計 施工 PM
規模
約212坪
立地
京都府京都市
竣工
2024年11月
撮影
Keiko Chiba (Nacasa & Partners)

MORE WORKSその他の実績