株式会社コスモスモアは、2024年1月8日に「株式会社GOOD PLACE」に社名を変更いたしました。 詳細はこちら×

【インタビュー付き】光栄ビル

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外観は落ち着いた赤みのあるトーンに刷新。

エントランスには視認性とビルの品格を両立する、重厚感のあるゲートを新設。

コンセプトをもとにビルのロゴ制作やワークショップの実施など、建築の枠にとどまらない場づくりも手掛けた。

水平ラインを強調するようにライン状の照明を配置することで、
暖かみを持たせながらもシャープで現代的な印象を加えた。

エントランス外側には重厚感のあるゲートを設置。内部の明るく上質な空間が
外部からも感じられるようなデザインで、空間が外へと広がっていくよう演出している。

エントランス。ベンチやテーブル、電源を完備することで、
待ち合わせやちょっとした作業や休憩に活用できるようにした。

エントランス既存の大理石壁面はそのまま活かし、建物が持つ素材の良さと歴史を表現。

共用ラウンジ「CO-EI」入口。テナント従業員の誰もが利用できるようになっている。

共用ラウンジ「CO-EI」。ランチや休憩、事務作業はもちろん、大人数でのミーティングや
セミナー、懇親会など、多目的に活用できる空間として設計している。

温かな光に照らされた共用ラウンジ「CO-EI」。
ビル名に入っている「光」という字は、「火」のまわりに「人」が集まる様子から生まれた漢字であることから、
デザインにはこの建物がまさにその「火」となり、様々な人々が自然と集まり、交流する場所になって欲しいという願いを込めている。

共用ラウンジ「CO-EI」。ベンチ下の防災用品などを収納できるスペースや
電源、ホワイトボード、ドリンクサーバーを設け、機能性も高めた。

各階のエレベーターホールは既存の枠を活かしつつ、壁面に左官調塗装を施し、モダンなダークカラーに。

共用部の廊下は白を基調とすることで連続性と開放感を持たせ、圧迫感を軽減。

各フロアの案内図はテナントとのワークショップで制作。
廃棄予定だったエントランスの大理石を金継ぎで再生するなど、環境と創造性を融合させた。

コンセプトをもとにビルのロゴ制作やワークショップの実施など、建築の枠にとどまらない場づくりも手掛けた。

トイレは図面を見直し、使われていない部分の壁を取り払い増床。
姿見や小物置きのカウンター、サーキュレーターを設置し、テナント満足度の向上を図った。

既存のテラゾーはそのままに、モノトーンのカーペットを敷き詰めることで古い印象を刷新。

着工前の様子。エントランスの目立つところに自動販売機が2機置かれていたこともあり、空間を活かしきれていなかった。

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リノベーションが繋がりを生み、価値を未来へ継承させていく

2010年以降、大阪の阪急梅田駅の北西エリアは大規模な再開発が進み、商業施設やホテル、オフィス、都市公園などが次々とオープン。その影響によってエリアの価値が見直されています。同エリアに近い光栄ビルも、周辺環境の変化に対応し価値をアピールすべく、リノベーションを決意し、GOOD PLACEへ依頼いただきました。

プロジェクトの始まりや、元々のビルの価値をどのように継承しながらリノベーションしたのか、光栄ビルを運営する光栄産業株式会社の代表取締役社長 杉浦宗稔様と監査役 岩本恵美子様に伺いました。

聞き手:株式会社GOOD PLACE 大阪支店 ソリューションPM課 課長 水谷龍一、大阪支店 ストラテジックデザイン課 岩本和士
執筆:住吉 大助

 

1974年の竣工以来、大規模刷新がないビルの困りごとを、リノベーションで解決

株式会社GOOD PLACE 大阪支店 ソリューションPM課 水谷 龍一(以下、GOOD PLACE 水谷)
元々、GOOD PLACEからリノベーションを提案したことがきっかけでこのプロジェクトが始まりましたね。

光栄産業株式会社 監査役 岩本 恵美子様(以下、岩本様)
とにかく古いビルで、ちょっとしたトラブルなどがあれば都度直してきていましたが、竣工から約半世紀が経っても、全体を刷新するようなリノベーションはしてきていませんでした。
改修については「こうしたいな、誰かに相談したいな」という思いはあったんです。でも、費用がかかることですし、誰に頼めば良いのかわからないという状況でした。そんな折に、GOOD PLACEの方に提案していただく機会があって。

光栄産業株式会社 監査役 岩本恵美子様 写真:TAKUYA HAYASAKA

 

GOOD PLACE 水谷
ぜひ当社でリノベーションのご提案をさせていただけないかと思い、2023年にお声がけさせていただいたのが始まりでしたね。最初はトイレの改修についてのご相談をいただいていましたが、その後実際にビルの状態を拝見させていただいたところ、光栄ビルが持つポテンシャルを感じたため、我々からエントランスやポーチ、ファサードを含む共用部全体のリノベーションをご提案させていただきました。

株式会社GOOD PLACE 大阪支店 ソリューションPM課 水谷龍一 写真:TAKUYA HAYASAKA

 

岩本様
当初は部分的な工事を想定していたため、あまりに盛りだくさんの提案内容にびっくりしたのですが、よくよく考えたら一気にビル全体を刷新できる良い機会になるかもしれないと、前向きに検討することにしました。

株式会社GOOD PLACE 大阪支店 ストラテジックデザイン課 岩本和士(以下、GOOD PLACE 岩本)
新築のオフィスビルが減ってきている今、リノベーションは新築に比べコストやスケジュールを圧縮できる合理的な手法だと思います。古い建物を解体して新たに建てるより環境的にも良いですし。

 

共用部全体の刷新を決断。コンセプトは「Horizontal(ホリゾンタル)」

光栄産業株式会社 代表取締役社長 杉浦宗稔様(以下、杉浦様)
正直な話、GOOD PLACEの皆さんと出会うまで、私はエントランスやポーチなどを変えようということまで考えていなかったんです。でも、トイレの他にも、屋上の床やタイル張りの外壁は経年でどうしても雨が染み込むようになり、雨漏りのリスクがありました。それから各階の扉はとても重たい上、錠のシリンダーも生産終了品となり、不具合が出ても交換が難しい状態でした。

光栄産業株式会社 代表取締役社長 杉浦宗稔様 写真:TAKUYA HAYASAKA

 

岩本様
加えて、エントランス入ってすぐの目立つところに自動販売機が2台置かれていたため見た目が悪く、また外から見てもビルの入口としてわかりにくかったのか、お隣のビルと間違えて入って来る人もいた状態でした。

リノベーション前の光栄ビルのエントランス 写真:GOOD PLACE

 

杉浦様
そのように色々と課題はあったので、GOOD PLACEの皆さんと話していく中で、ご提案いただいたようにエントランスや共用部などビル全体をひとつのコンセプトで刷新することを決断しました。お願いした背景として、一部分のリノベーションではなくトータルで提案してくれることに安心感があったことや、最初の提案のデザインを見て、「是非やりたい!」 と感じたこともありますね。

GOOD PLACE 水谷
さまざまな提案を重ねて、ご検討いただいた末、2023年の年末頃にビル全体の刷新が決まり、2024年の9月から工事がスタートしました。

岩本様
30軒以上のテナント様が稼働している中、音や匂いなど、いろいろ配慮していただきながらのリノベーションになりましたね。テナント様の終業後、20時半頃から工事が始まり、出社前に工事は撤収している状態でした。朝出社するとガラッと風景が変わっているので、驚きの毎日でした。「昨日あった壁がなくなってる!」みたいな感じで。

GOOD PLACE 水谷
そういうことで言うと、工事期間中は、GOOD PLACEが常に現場に常駐し、現場を管理していました。
先ほど「入口としてわかりにくかった」とのお話もありましたが、リノベーション後、エントランスの印象はどのように変わりましたか?

ポーチには重厚感のあるゲートを設けた 写真:NISHIOKA KIYOSHI

 

岩本様
ポーチにゲートを設けたことで、入口がひと目でわかるようになり、以前のように迷われる方もいなくなりました。最初に提案いただいたときは「費用がかかるからいらない」と断ったのですが、ゲートがある方が入口がわかりやすくなると思い直して、やっぱりやりましょうと。

GOOD PLACE 岩本
ゲートは一度、設計の中から無くなりましたよね。

岩本様
一度は見送ったのですが、最終的に復活させました。そして今、ゲートを設けて良かったと思っています。元々段差のあったポーチは、なだらかなスロープへ変わり、そのスロープの先に重厚感のあるゲートを新たに設けています。中に入ると大理石と白壁のエントランスになる。入口がわかりやすくなりました。

杉浦様
リノベーション前の昭和らしい雰囲気も趣があって良かったのですが、今回のリノベーションでエントランスや共用部にダウンライトが設置されたこともあり、やわらかさや温かみが生まれたと感じています。

白を基調とした壁と天井にダウンライトで温かみが増したエントランス。左が新たに設けた待合スペース 写真:NISHIOKA KIYOSHI

 

岩本様
2台あった自動販売機のうちの1台を入口から見えない受付裏のスペースに、白に再塗装したうえで設置しました。機能は損なわずにエントランスのトーンに合わせることで、景観は良くなったなと思います。
入って左手の待合スペースは、GOOD PLACEの提案で新設してもらいました。外部の方が打ち合わせなどで光栄ビルに来られた際、早めに来られた方が待つのに使えるし、帰る時にもうちょっとお話ししたいなと思って打ち合わせもできる。そういうスペースとして良いなと思っています。

杉浦様
待合スペースを提案いただいたときにはあまりピンときていなかったのですが、できあがってからは「これ、ほんと必要やな」と感じましたね。

GOOD PLACE 岩本
待合スペースはコミュニケーションの場のひとつと考えたのですが、そこにたどり着いたのは改修前の光栄ビルが関係しているんですよ。今ではめずらしい有人の受付がエントランスにあって、その受付の方がさながらハイタッチするような勢いでテナント様と明るく挨拶している様子を見て、「人と人の繋がりや温かみのあるビルだな、このことをリノベーションコンセプトの軸に据えられないかな」と考えたわけです。
そうして“Horizontal(ホリゾンタル:水平、横の繋がり)”というコンセプトで、光栄ビルに入居するテナント様同士が横に繋がり、広がっていく空間を提案することにしました。

株式会社GOOD PLACE 大阪支店 ストラテジックデザイン課 岩本和士 写真:TAKUYA HAYASAKA

 

既存の素材を活かして、新たな魅力を生み出し、未来へつないでいく

岩本様
「繋がり」というテーマで良い思い出として残っていることが、エントランスの改修で出た大理石を使い、金継ぎ職人の先生をお呼びして実施したワークショップです。テナント様にも声をおかけして、テナント様とGOOD PLACEの皆さんと私たち、みんなで金継ぎをしました。そこで継いだ大理石が各階のフロアマップに使われているので、歴史を継承している形になっている。

各フロアのフロアマップに使われている大理石は、改修前のエントランスで使われていたもの。金継ぎをして生まれ変わった 写真:NISHIOKA KIYOSHI

 

GOOD PLACE 岩本
元々は、エントランスの左側壁面はすべて大理石でできていたのですが、デザイン上、全部は使わないことになり、余った大理石を何か活用できないかと考えたんです。歴史の継承に加え、フロアマップに用いることでテナント様同士の名前が並び、自然な“横の繋がり”も感じられるのではないかと考えました。
そこで社内で相談をしたら、「知り合いに金継ぎ職人の方がいるよ」と紹介してもらい、その方に相談しました。陶器だけでなく、ガラスや木のお椀も継げる技術を持った方なのですが、大理石を継ぐのは初めてということで事前にサンプルをお送りするなど、いろいろ準備をして、ワークショップを開くことになりました。当日は30人を超える方が参加してくれました。

光栄ビルのリノベーションの一環として開催した金継ぎワークショップ 写真:GOOD PLACE

 

杉浦様
元々1階の壁に使われていた大理石が、金継ぎされてひとつの立派なものになったその姿を見て、これはたいへん価値のあるものだと思いました。

GOOD PLACE 水谷
他に受け継いだものとしては、植栽のアジサイもありますね。リノベーション前の植栽を株分けしてポーチ前と共用ラウンジのベランダに植え直してあります。

岩本様
あのアジサイ、夏になるととても濃い青色の花を咲かせるんです。それがすごく綺麗なのでテナント様も皆さん好きで、結構愛着があったんです。だから残していただけてうれしいです。

ポーチ前で鮮やかな花を咲かせるアジサイ 写真:GOOD PLACE

 

GOOD PLACE 岩本
既存のものを活かすという観点では、エレベーターの枠や内階段に使われていたテラゾーも、当時のまま残しています。テラゾーとは大理石や石灰石などを砕いてセメントや樹脂などで固めた後、綺麗に磨きあげてつくる素材で、改修で無くしてしまうより、残してアートとして昇華させた方が良いのではないかと思い、このデザインを提案しました。

リノベーション前。内階段の端に使われているテラゾーは手作りのため、それぞれ異なる表情をしている 写真:GOOD PLACE

 

リノベーション後。表情があるテラゾーはそのまま残し、階段部分の床を張り替えて刷新した  写真:NISHIOKA KIYOSHI

 

エレベーターの枠にもテラゾー。改修前の魅力的な部分は積極的に活用する 写真:GOOD PLACE

 

岩本様
大理石の金継ぎ、アジサイ、テラゾー、これらはいずれもリノベーションコンセプトの“Horizontal”に繋がっていますね。

あとは以前使っていた「館銘板」があるので、今後どう活かすか考えています。だいぶん年季が入っているのですが、綺麗に磨いてしまうよりこのまま使う方が良いと思っています。ただし、どこでどう使うのが良いか、まだ決めてなくて、残してあります。

杉浦様
「館銘板」を始め、今後やっていきたいことがいろいろあります。今回のリノベーションで、既存のものを活かしながらさまざまな繋がりも強化できたので、これをきっかけに活用していきたいと思います。

 

リノベーションから建物の目的を再定義、そして地域の価値創造へ

岩本様
振り返ってみると、最初は長年の課題だったトイレの改修をきっかけに共用部全体の魅力的なリノベーションをご提案いただいたのち、何度も打ち合わせをして現在の姿になりました。もちろん、トイレも大満足の仕上がり。広くて快適な空間になりました。

写真:TAKUYA HAYASAKA

 

杉浦様
私はこの会社に入ってもう20数年ですが、トイレは狭く、洋式と和式ひとつずつしかなかったため、ずっと前からどうにかしたいと思っていました。テナント様からトイレを増やして欲しいというご要望もあり、光栄ビルにとってすごく切実な問題だったんです。

GOOD PLACE 岩本
男子トイレのすぐ横に、かつて使われていたボイラー用の煙突と、ダストシューターとして使われていた縦穴があったので、そのデッドスペースを活かしてトイレのスペースを広げました。個室の空間にゆとりをもたせたので、使いやすくなったのではないでしょうか。

岩本様
テナントの皆様も喜んでいると思います。「新築のようになりましたね!」とおっしゃってくださるお客さまもいて。
私個人としては、トイレのピクトサインを気に入っています。実は、過去に別の会社さんに相談したことがあったのですが物足りなさを感じた出来で、「ぱっと見て可愛く、心に響くようなデザインにしたい」と思っていました。でも、GOOD PLACE提案のピクトサインは一発OKでした!

光栄ビルのトイレのピクトサイン。岩本様が過去に見て気に入っていた「ひょっこり顔をのぞかせる」イラストの構図を取り入れた 写真:GOOD PLACE

 

広く快適になった男子トイレ 写真:NISHIOKA KIYOSHI

 

GOOD PLACE 岩本
駅のような公共施設ではないので、「どーんとした青赤の男女のピクトサインみたいなものとは違う、可愛いものにできないか」とご相談をいただいて、翌週には提案に伺った覚えがあります。毎週の定例の打ち合わせでいろいろな相談をいただき、ご提案を重ねてきました。

GOOD PLACE 水谷
ご提案を重ねる中で、判断の難しい局面も多かったかと思いますが、1年以上にわたって時間をかけて対話させていただいたお陰で我々もビルに対する理解が深まり、アイデアを出すことができました。快くご参加いただいたことに感謝です。光栄ビルを刷新することでどう価値を高めていくか、コストや内容の見直しが必要になることが幾度もありましたが、その都度丁寧にご検討くださいました。

GOOD PLACE 水谷
今後の活用方法として、屋上はいろいろ工夫できそうですね。今回のリノベーションでしっかり防水工事をしました。

岩本様
屋上は空調の室外機があるため普段は立ち入り禁止なのですが、最近の空調は室外機がコンパクトになり、数も減っているためかなり空きスペースがあるんですよね。しかもこの屋上からグランフロント大阪がとても綺麗に見えるんです。特に夜に。あの風景を眺めながらビールを飲んだら絶対に美味しいだろうなと思っています。梅田のビル夜景を借景に、ビアガーデンのような雰囲気で。

GOOD PLACE 岩本
そういうイベントを催せると、テナント様同士の繋がりをさらに強められそうです。リノベーションをきっかけに空間の使い方や新たな価値を考えることで、建物の目的を再定義できるのではないかと思います。そしてさまざまな取り組みへ発展していくことは、このプロジェクトに関わったものとしてとてもうれしいです。
加えて、梅田駅の北西のこの一角は、中規模ビルの経営者さん同士の繋がりも強いですよね。光栄ビルがリノベーションしたことで、光栄ビルとたくさんのビルが何らかの形で結ばれる。そんな連携も楽しみにしています。そういった広がりは、この街だからできる魅力のひとつだと思うので。
今後も引き続きGOOD PLACEでご提案をさせていただけると、大変ありがたく存じます。

左より光栄産業株式会社 監査役 岩本恵美子様、代表取締役社長 杉浦宗稔様。株式会社GOOD PLACE 大阪支店 岩本和士、水谷龍一 写真:TAKUYA HAYASAKA

クライアント
光栄産業株式会社
プロジェクト
光栄ビル
ご相談背景
新築以来、全体的なリノベーションが行われておらず、外壁や防水などの部分的な補修・修繕にとどまっていた光栄ビル。20年以上にわたり、建物全体の価値向上に対する課題感が継続していた。
特に雨漏りなど設備面での老朽化が顕著で、早急な更新対応などが必要であった。また、エントランスは大理石の意匠が美しいものの古さが目立つ印象で、空間を活かしきれていなかった。
これらの課題を包括的に解決し、ビルの価値をより高めるため、リノベーションをご相談いただいた。
コンセプト
「Horizontal」
大小さまざまな企業が入居し、多彩な業種や働き方が交差する光栄ビル。
エントランスでは常駐管理人がテナントの方々へ日常的に挨拶をされている光景があり、この建物ならではの温かな景色だと感じた。
一般的に同じビルに入居していても、人と人との交流は企業内(縦の繋がり)に留まることが多く、加えて小規模な企業では交流が限られ新しい繋がりや発見が生まれにくいのではないかと考えます。
人は働く場面だけでなく、さまざまなコミュニティの中で多様な自分を生きている。だからこそ職場でも自分らしさを大切にし、生き生きと過ごせる場所にしたい。この想いを込め、「水平の」「横の」を意味する「Horizontal」というコンセプトとして掲げた。

たくさんの人がすれ違う場所で、ちょっとした機会を設けると、
みんなが顔見知りのご近所さんになれる。
光栄ビルに入居してから、業績が良くなったんだよね。
仕事が捗るんだよね。居ると楽しいんだよね。
そんな言葉が聞こえてくるビルになってほしい。

繋がりが希薄化しやすい現代において、光栄ビルのもつ温かでかけがえのない日常を守りながら人と企業が交差する希望の光のようなビルになってほしいと願い、設備の刷新にとどまらず、リノベーションによって新しい価値と光を生み出す空間を提案した。
提案内容
●全体
建物全体のデザイン統一を図り、柔らかな雰囲気をもった、光を象徴する空間に。建物の印象を根本から刷新し、品格とやわらかな温かさを兼ね備えた空間づくりを目指した。また、コンセプトをもとにビルのロゴ制作やワークショップの実施、コーポレートサイトのリニューアルなど、建築の枠にとどまらない場づくりをおこなった。

●外観
サッシをブラックに更新し、タイルにはグレージュの塗装を施すことでモダンなカラースキームに統一。建物全体に洗練された印象を与えた。
また、元々あった植栽のアジサイを保管し、植え直しもおこなった。
水平ラインを強調するようにライン状の間接照明を配置することで、暖かみを持たせながらもシャープで現代的な印象を加えた。

●エントランス・各フロア共用部
エントランスにはベンチスペースを設置。待ち合わせやちょっとした作業や休憩に活用できるようにした。照明演出によって温かみと柔らかさを持たせ、コミュニケーションを誘発させることを狙う。エントランス既存の大理石壁面はそのまま活かし、他の新築ビルとの差別化を図るとともに、品格ある空間を演出している。
各階のエレベーターホールは既存のテラゾーの枠を活かしつつ、壁面に左官調塗装を施し、モダンなダークカラーに。周囲の床・壁・天井は白を基調とすることで、空間にメリハリを持たせた。
各フロアの案内図は今回のリノベーションで廃棄予定となっていたエントランスの大理石を活用し、テナントとのワークショップで制作。
トイレは図面を見直し、使われていない部分の壁を取り払い増床。サインや照明にもこだわり、建物全体のデザインと調和した洗練された空間へと生まれ変わらせた。

●共用ラウンジ「CO-EI」
空いていたテナント区画の一室を、誰もが利用できる共用ラウンジへとコンバージョン。「CO(協力、共同)」「Enjoy(楽しむ)」「Interaction(交流、ふれあい)」を通じてテナント同士が自然と繋がり、新しい価値を生み出す場として生まれ変わらせた。
プロジェクト
メンバー
岩本 和士(土居 室) / 藤岡 遼 / 水谷 龍一 / 堀井 敏彦 / 萩原 知花
実施内容
設計 施工 PM サイン計画
規模
887.8坪
立地
大阪府大阪市北区
竣工
2025年3月
撮影
NISHIOKA KIYOSHI

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